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身代わりは終わり


「きっと、ワトフォード公爵家の娘と婚約をしていると知ったら彼は喜ぶだろう。そんな彼が、エリーゼを見たらいったいどんな顔をするのか……楽しみだ」

 

「…………?」



 

 それ、どういう意味?



 

 やけに嬉しそうに話すエリオットのセリフに、違和感を覚える。



 

 ワトフォード家の娘と婚約してるって知ったら、ルーカスが喜ぶ?

 エリーゼの顔をみたらどんな顔をするのか楽しみ?

 それって、エリーゼが可愛すぎるから会った瞬間喜ぶルーカスの様子を見るのが楽しみ……ってこと?



 

 言っていることは何もおかしくない。

 エリーゼはたしかにリアル天使かと思うくらいの美少女だし、誰だって彼女が婚約者だと知ったら喜ぶだろう。

 でも、それをエリオットが言っていることがおかしい。自分の妹のことをそんなふうに言うような、シスコンキャラではないはずだ。



 

 コロコロ意見変えたり、ほんっと意味わかんない男!

 ……というか、エリーゼの代わりをしなくていいなら、私がここにいる意味はないんじゃない?

 もしかして、解放される? 私、とうとう自由に!?



 

「エリオット様。エリーゼ様も見つかりましたし、私は……家に帰ったほうがよろしいでしょうか?」

 

「いや。君はエリーゼが行方不明だったことも知っているし、外に行かれては困る。このまま家にいてもらおう」



 

 ですよねーー。

 うん。わかってた。だって、溺愛ルートなのに家から出られるわけないもんね。



 

 ほんの少しの希望も見事に消え去り、改めてこの生活を続ける覚悟を決める。

 ただ、エリーゼが帰ってきたことでいろいろな変化はあるはずだ。

 まず私は妹の代わりではなくなるし、どういう立ち位置になるのか確認しておきたい。



 

 メイド……もしくはその下の雑用って言われるかも!



 

「かしこまりました。では、すぐに部屋を移動します。私はどちらで働けばよろしいでしょうか?」

 

「!」


 

 私の質問が意外だったのか、エリオットが目を丸くして私を凝視した。

 驚いた表情のあと、どこか嬉しそうにニヤッと笑う。


 

「……うちで働く気か? フェリシー。君はうちの秘密を握っているんだ。俺を脅して、悠々自適に暮らしたっていいんだぞ?」

 

「いえ、そんな。脅すだなんて……」



 

 何言ってんのよ!

 あんたにそんなこと言ったら、あとで何されるかわかったもんじゃないわ!

 もう死なないとはいえ、私はできるだけ波風を立てたくないの!



 

 それに、いつかこの家を出たときのためにお金をできるだけ貯めておきたい。

 エリオットからもらったお金がそれなりにあるけど、好感度がゼロになったら取り上げられる可能性もあるし、自分で稼いでおくのが確実だ。

 きっと、ワトフォード公爵家ならお給金も高いはずだ。


 

「家に置いていただけるだけでありがたいです。なので、何かお仕事をください」



 

 できるだけ簡単なやつでお願い!



 

 そんな心の叫びを悟られないように、笑顔を作る。

 エリオットは少し考える素振りをしたあと、何かおもしろいことが閃いたような顔で私を見た。


 

「そうだな……では、俺の専属メイドにでもなってもらおうか」

 

「…………はい?」



 

 専属メイド? エリオットの?

 …………絶対に嫌だ!!!



 

 朝から晩までエリオットと一緒だなんて、神経がすり減りすぎて寿命が縮まってしまう。

 それなら過酷な雑用仕事をするほうがまだマシというものだ。



 

 どうしよう。これ、断ってもいいのかな?

 でも自分から仕事をくださいって言っておきながら、それはやだってワガママ言うのは……。




「あ、あの……」


「フッ」



 困惑している私を見て、まだ何も言っていないのにエリオットが吹き出した。

 私を困らせるためにわざと言ったのだとすぐにわかったけど、苛立ちを気づかれないようにグッと拳を握る。




 最初から専属メイドになんてするつもりなかったのね!?

 私をからかって遊んで……ほんっとに性格が悪いんだから!!!



 

「冗談だから安心していい」

 

「…………」

 

「君には他にやってもらいたいことがある。だから、使用人にはならずそのまま家にいてくれていい。部屋も出なくて大丈夫だ」

 

「え? ですが、あのお部屋はエリーゼ様の……」

 

「エリーゼには新しい部屋を用意させる。空いている部屋はたくさんあるからな」


 

 そう言ってエリオットがパチンと指を鳴らすと、部屋の端で待機していた執事が軽く頭を下げて出ていった。

 おそらく、エリーゼとディランに今のことを伝えに行かせたのだろう。


 

「家具も全部新しく用意するから心配はいらない。フェリシーは今の部屋を引き続き使ってくれ」

 

「…………」



 

 家具も全部新しくする?

 ベッドも? テーブルも? カーテンも?

 待って。私の部屋は、衣装部屋にもつながってるんだけど……まさか、ドレスとか普段着も全部新調するつもり!?



 

 それら全部揃えたら、平民の家くらい余裕で建てられそうだ。

 それを思いつきで言い出すのも、高級家具しかないエリーゼの部屋をあっさり私にくれてしまうのも、生まれながらの貴族ゆえの行動なのか。

 前世も現世も平民だった私には、到底理解できない。



 

 これだから金持ちは……っ!

 いや。ありがたいんだけどね!? これからもあの気持ちのいいベッドで寝られるとか最高なんだけどさ!

 でも、待遇良すぎてなんか怖い……ハッ!



 

 そこまで考えて、先ほどのエリオットのセリフを思い出す。

 つい部屋を出なくていいという部分に反応してしまったけど、その前に何か恐ろしいことを言っていたような気がする。



 

〝君には他にやってもらいたいことがある〟?



 

「あの、エリオット様。私にやってもらいたいこととは、なんでしょうか?」

 

「ああ、それは……」


 

 わざとらしく言葉を止め、続きを気にしている私の様子をチラリと見る。

 目が合った瞬間、なんとも言えない不安な感情がドッと押し寄せてきた。



 

 何!? なんかすごい嫌な予感がするっ!


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