表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
56/79

溺愛ルート!? 何それ!?


「さっき、孤児院の前にディラン様とレオン様がいましたよ」



 そんなビトの発言に、私の頭は一瞬で宇宙空間に吹っ飛んだ。

 脳が、理解するのを拒んでいる。




 えーー……と? なんて?




「ビト?」


「はい」


「今のは私の空耳かしら? なんか、ディラン様とレオン様の名前が聞こえたと思ったけど」


「空耳ではないです」


「あ、そう」




 空耳ではない……なるほど。

 じゃあ間違いなくディラン様とレオン様の話で合ってるってことね?


 ……で、その2人がどこにいたって?




「孤児院の前にいたって言ってた気がするけど、本当はどこにいたの?」


「だから孤児院の前です」


「どこの?」


「さっきフェリシー様がいた孤児院です」


「私が孤児院にいるところを、その2人が見てたというの?」


「はい。なんならルーカス様のことも見てましたよ」




 なるほど、なるほど。

 つまり? さっきいた孤児院の前にはディランとレオンがいて?

 私とルーカスのことを、外から見ていたのね?

 そういうことなのね?




 いい女風に落ち着いてみたけど、もう限界だ。

 心の奥底から湧き上がってくる感情を抑えきれない。




 えええええーーーー!?!?

 あの場所にディランがいたの!? なんで!? 引きこもりのレオンも!? なんで!?


 っていうか……っていうか……ルーカスを見られちゃったの!?




 まともに立っていられなくなり、フラフラッとワトフォード家の外壁に寄りかかる。

 たぶん、今私の顔は真っ青になっているだろう。



「……ビト」


「はい」


「私はこのまま旅に出るわ。今までありがとう。さようなら」


「いやいや。待ってください。何言ってるんですか?」



 フラフラと歩き出そうとした私の腕を、ガシッと掴まれてしまう。

 逃亡を企んだ私を見て、ビトが仕方なさそうに言葉を足した。



「大丈夫ですよ。ディラン様はあの男性がクロスター公爵家のルーカス様だと気づいていませんから」




 えっ!?




「……本当に?」


「はい。レオン様と、誰かわからないという話をしていましたから」


「……どこで?」


「街の中で、です。離れていましたが、意識して耳を立てていたので聞こえました」


「…………」




 どんだけ地獄耳なの!?




 さっき、ビトは自分のことを地獄耳だと言っていた。

 賑やかな街の中でも離れた場所にいるディランたちの声が聞こえるなんて、それはもう特殊能力と言ってもいいんじゃないだろうか。




 で、でも助かった。

 じゃあ、私がエリーゼの婚約者と会ってるのはバレてないってことだよね?

 



 ホッとするとともに、よく考えればバレているはずがないと思えてくる。

 もしバレたなら、その場でディランが怒り狂って孤児院に乗り込んできたはずだからだ。




 よかった……!

 レオンはともかく、ディランもルーカスの顔は知らないんだ!

 命が……救われた……!!




 でも、それで完全に安心とはならない。

 もしこの先どこかでディランとルーカスが出会うことがあったら、その瞬間にバレてしまうからだ。




 やっぱり早くエリーゼを見つけてこの家から逃げ出さないと……!!!

 ディランにすべてがバレる前に……って、あれ?




「そういえば、なんでディラン様は孤児院の前にいたんだろう? しかも、家から出ないレオン様も一緒だなんて」


「…………」


「何か心当たりはある?」



 私の質問に、今度はビトが黙ってしまった。

 その表情を見る限り、理由を考えているようには見えない。まるで、私にどう言おうか迷っているような顔だ。




 ディランたちがいた理由、ビトは知ってるの?




 少しの間を置いたあと、ビトはボソボソと答えた。



「それは……俺の口からは言えません」




 なんで!?

 俺の口からは言えないって何!? 機密事項!?

 エリオットからの秘密の指令とか!?




「え。で、でも、さっきビトは私を優先してくれるって……」


「それとこれとは別です。俺から話しちゃったらつま……個人的な判断で話せる内容ではないので」


「…………」




 今、俺から話しちゃったらつまんないって言おうとしたよね? ね?

 なんなのよ、それ!

 私を優先って言っておきながら、自分の楽しさを優先してない!?




 そんな文句を言いたいところだが、今はビトを敵に回すのは非常にまずいため何も言えない。

 すべてを知っているビトが私を裏切ったら、その場で即ゲームオーバーだ。




 好感度が1番高いから安心してたけど、まさか隠しキャラのビトがこんなにも重要人物になるなんて……!

 嫌われたら即ゲームオーバーなんて、エリオット並みの危険度じゃない!


 ハッ! 今の好感度はどうなってるんだろう?

 さっきのイベントの結果は!?


 


「……わかったわ。じゃあ、家に帰りましょう」


「はい」



 スタスタと先に歩き出し、私の表情を見えないようにする。

 ビトが確実に私の後ろにいるのを確認するなり、私はマイページにそっと触れた。


 パッ


 

 『好感度


 エリオット……17%

 ディラン……30%

 レオン……30%

 ビト……55%』



 

 ごっ……55%!!!

 10%増えてるっ! と、いうか、半分以上になってる!!

 嘘っ! これは、かなり好感度が高いと言っていいのでは!?




 なんだかんだ、ビトは今まで隠していた事実を私に打ち明けてくれた。

 これは、私に対する信頼度が上がったのと、少しは心を許してくれたということなのだろう。




 やったぁ!!

 ビトとは結構いつも一緒にいるし、他の人のイベントのときにも一緒にいたらさらに好感度を上げることができる!

 これはビトでクリアを目指すのもアリかも……って、ん?



 

「…………?」




 目の前に表示されている好感度のマイページ。

 なんとなく……本当になんとなくだけど、ビトの色が白ではないような気がする。




 ピンク色が……入った?




 ハッキリとピンク色になったとは言えないような、微妙な変化。

 レオンの色もだいぶ薄いけど、ビトの文字はさらに薄いピンク色になっている気がする。


 なぜそう思うのかというと、エリオットの真っ白に比べるとあきらかに色が違うからだ。




 エリオットの文字が普通の白なら、ビトの色は白……ではないよね?

 んんん???

 よくわからない……白だけでも何種類もあるっていうし、ただの気のせい??




 歩きながらもジロジロとマイページを見ていると、何も触れていないというのに急に画面がパッと変わった。

 少し豪華になったアンティークフレームの中に、見たこともない文が書いてある。


 

『【ルート変更チャンス】


 あと1人の好感度変化で、家族ルートから溺愛ルートに変更できます』



「へっ!?」




 溺愛ルート!? 何それ!?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ