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「ヘハハハハ!これでテメーは終わりだ!ベルゼブブ!」
「四の五の言わないでさっさとやりなさいよもう!」
「それにしても、このボスは結構強いな、おりゃそろそろ限界だ。」
「大丈夫、私がサポートします。」
「みんな、あと少し、頑張って!」
地下牢みたいな空間の中で、人間と亜人とエルフで組んでいた五人のチームがそこで必死に戦っている。
「…ウオオオー!」
《ベルゼブブ》という名前の半人半獣の生き物が咆哮し始め、何やらの大技を発動するように見える。左手と右手を合わせて、合掌のジェスチャーとともに、無数の黒い光柱が地面から空に突き出す。
「避けろう!」
赤髪の少年が思い切り黒い猫耳が付いてる少女に叫んで、地面を全力で蹴って、その反動力で空を飛ぶ。しかし猫耳の少女はそのような動きができないので、胸が光柱に貫通された。
「黒猫!避けろって言ってたろうが!!」
「うるさいわね、私はあんたほど暴れるやつじゃないの、普通に避けれないでしょう?」
「ハア?!オメーのせいだろうがよ!なに偉そうに言ってんだ、このクソ猫が!」
「あんたのその口の聞き方こそなんなんです?礼儀というのは学んだことはないですか?」
「二人とも、盛り上がってる途中でごめんなさい、イチャイチャは後にして欲しいのです、まずはこのボスを倒さないと…」
「そうさ、お前たち、しっかりして。」
この日常的な夫婦喧嘩に慣れていた人狼の二人は頷きながらツッコミの言葉を吐き出した。
「はあ?目腐ったですか?」
「ハア?!目腐ったんだか?!」
当事者の二人は否定しているが、声はまったくハモった、さすが親友でもできないくらいシンクロニシティ。
「みんな、早くしないと、ボスは二段階に入るよ、急いで!」
一番小さくて可愛い白いエルフちゃんが、盾のようなものを構えながら他四人のメンバーに声をかけた。小さな円盾ですが、攻撃を受ける度に微動もなし、まるで攻撃は全然当たってないような強さです。
《ホリー・シールド》、それがこの盾の名前。噂によって、エルフ族の中で、一番強いエルフこそその真価を発揮することができるみたい。つまりこの子が、まさにその最強のエルフです。
「その前にまずは黒猫の治療を、わかったなカヲリ?」
「はい!ただいま!」
口は悪いが猫耳の少女を心配してる赤髪の少年が声をかけた「カヲリ」は、その白いエルフちゃんのこと。
「…ヒール。」
難解な呪文を唱えたら、最後に聞き慣れた「治癒」という意味の単語が出てきて、それは間違いなく日本語です。猫耳少女の胸の傷口の上に小さな緑色のリングが現れ、回りながらだんだん大きくなって、最後は猫耳の少女を包み、眩しい光を放った。
白いエルフちゃんが使ったのはヒーラー職業の固有スキル《リボーン》つまり「再生」、傷口周りの細胞分裂を加速し、傷が悪化する前に体の自己修復機能で対抗する、つまり治せるかはその人の体の素質が左右すること。幸い猫耳の少女は亜人族の猫人、自己回復力は人間の五倍ぐらい、たとえ致命傷を負っても暫く堪えられる、その猶予期間で治療をすれば完全に治れる。
「ありがとう、カヲリちゃん。」
猫耳の少女は白いエルフちゃんにニヤリとして、感謝の言葉を吐き出した。
「治ったら手伝ってくれ!」
「うるさいわね、分かったってば。」
瞼を閉じて、手を伸ばして、刀を握ろうとするようなジェスチャをしたら、手のひらに刀の柄が出現し、鍔の真ん中から約80センチの刃物が突き出す、腰の左側にいつの間にか漆黒の鞘が掛けている。
上級刀|《月結》《つきゆ》、少女の愛刀です。かつてバースターと一緒に素材を集めて作ったこの刀、刃先はもう鈍った、特殊な素材で作ったため、修復するにはその素材が必要です、しかし素材の元であるモンスターはもはや絶滅した。そこそこ強力な武器でもないし、いつ完全に廃品になるかも分からないし、普通に考えるとこんな刀は捨てた方がいいだろう。でも少女はこの刀が大好き故に、なんとしても、せめて修復できないなら、これ以上壊せないようにして欲しい。
それも一行がここにいる理由。ベルゼブブのドロップアイテムの中に《スピリッツシールド》という武器を保護するための《盾オーブ》が稀に出現するという噂があるから。
「みんなはお前のためにこんなことしてたんだってことに自覚あんのかあ?」
「わ、わかったよ、ごめん。」
普段はあの格好けど、実は猫耳少女は素直な人、ただずっと照れ隠ししている、いわゆるツンデレ。正直なところ、自分もずっと悩んでる、素直にすればいいのに、どうしてあんな態度をとったのか、時々自分もわけ分からなくて赤髪少年と口撃をし、冷静になると、ほぼ自分のせいだと自覚はする、それなのに一度もちゃんと謝ったこともない。
(私って、悪い子ね。)
落ち込んでる少女を見て、少年は頭を掻きながら、不機嫌そうに口を開けた。
「ま、まあ…わかれば…な、ほら、やるぞ。」
「あ、うん。」
少女は刀を構えて、白いエルフちゃんのと全く違う呪文を唱えた。「は!」の声と共に、無数の黒い矢が現れ、一斉にベルゼブブの方に飛び出したが、ボスのバリアによって無効化された。
「ちっ、このバリアは厄介だな、時雨ちゃんの攻撃が当たらなかったら意味ないな。」
人狼少年が舌打ちしていたら呟いた。「時雨」とは猫耳少女の名前、人狼少年の名前は「龍ノ介」、赤髪少年は「バースター」、最後に人狼少女は「リリス」。
バースター、時雨、龍ノ介、リリス、カヲリの五人が結成したチームは最強のチームと呼ばれてるが、このベルゼブブはあらゆる攻撃を無視することができる《ハエの甲冑》というバリアが持ってるため、流石に今回の相手に勝ってるととても思えないでしょう。
「おい!黒猫!これのどこが倒れそうに見えるんだよ、オメーの情報はあてる?」
「あ、当てる…かしら。」
「とりあえず一旦撤退だ!コイツバリアを張ったらすぐ回復して、不死身だよコイツ、なんかキーアイテムでもあるじゃねぇかよ。」
「俺も賛成、こんなのどう考えてもおかしい、多分なにかの条件があるかもしれない。」
「そうね、今は引いておこう、時雨さん。」
「ポータル開きましたよ、みんな入って。」
四人が話し合ってる途中、カヲリはポータルを開いた、外見からすると、縦向きの渦巻く水流そのもの、ギャラクシーのように光ってる。このポータルはエルフ族だけの瞬間移動能力を具現化し、使用者の誰でも一時的にその能力を得て、空間を操ることができるという原理で作られたもの。でも最終の目的地は魔力回路の主が決めるもの、だから決してノリノリで入られるわけではない、十分の信頼がなければ。
「ほら、行くぞ!」
「ちょ、手を引っ張らないで、自分で歩くから!」
バースターは時雨の手を引っ張って、無理矢理連れて去った。
「お、バースター、おかえり。」
「ああ。」
「なんか不機嫌な顔な、なんかあったのかな、でもまあ、バースターだし、いつもそんな顔な。」
空気を読めない自問自答をしているのこの男の名前は「スター」。金色の髪、鎧、武器、ネックレス、まさにその名前にふさわしい格好。
「黒猫に聞け。」
「また喧嘩?」
「いや、今回はちょっと違うな。」
水を汲んできた龍ノ介はそのままスターの側に座った。
「ほら、留守番おつかれ。」
「ああ、ありがとう。それで、一体どうした?」
「時雨ちゃんはね、」
言おうと思ったところで、バースターの遠くからの怒鳴りに割り込まれた。
「は?!情報商人?!どこの何様なんだよ!そんなもんで信じた?にしても金かかった?!」
「…はい」
流石に今の時雨はもうバースターと口撃するような気分はなかった、たしかに自分のワガママでチームメンバーに迷惑をかけた。3時間休まずずっと勝ってない相手と戦ってた、バースターが怒っても当然のことでしょう。
「ったく、オメーな、一体なんでその刀そんなに大事にするなわけ?ステータスもごく低い、刃ももうじき折れるんだろう?オメーの実力ならレジェンド級のヤツを使った方がいいじゃねぇ?そんなわけでオメーはいつまでもトップ除霊師になれないんだよ。」
「ごめん。」
「いやだから、なんでその刀じゃなきゃいけないなわけ?」
「これは、大切な人からのプレゼント。」
「あ…」
それを聞いて、バースターは唖然として、何も言えなかった。怒るのは当たり前、さっきの3時間の間で無駄なことばかりしたから、でも強いていうなら、別に損などはない、そこまで追い詰めなくても、何より大切な人からの贈り物、それは誰だって一生大事にするだろう。
バースターが知らないのは、その大切な人は自分のこと。素材集めは一緒だったが、鍛治は時雨一人でやってたから、知らなくても仕方がない。
「とりあえず、次はもっと考えろう、わかった?」
「はい…」
「いいからいつまでも落ち込んでるつもり?そんなにショック受けたでも?」
「違うわ、バカ、ただ考え事してるだから…」
「どうやらそっちも終わったところみたい、それで、なんかあった?」
目をその二人からそらして、スターは再び口を開けて問い続けた。本人に直接聞いたほうが早いだろうが、あの二人だから、拗ねてるんだな、どっちも素直に答えてくれるタイプではない。
「あ、あれはね…」
「あはは…いや、結局うちの時雨お嬢様はどんだけリーダーのこと好きなんだよ、いっそこくってみてもいいじゃん、ったく。」
経緯をを聞いたら、苦笑を漏らした。
どうやら時雨はバースターのことが好きということはみんなで共有してる情報らしい、本人だけまだ知らない、そこは鈍感というかなんというか、チームのみんなもただこの二人を見守っていいと決めた。
【システムアナウンス、現在時刻、朝6時です。】
「お、あと一時間か、あとはゆっくり休め、結構疲れたろう?」
「ああ、というわけで、次は俺が留守番やる。」
「へいへい」
「その前に、そろそろみんなも呼んで仕上げをしようか。おーい、みんな、集まるぞー」
龍ノ介の招集に応えて、チームメンバーたちが円卓を囲まって、作戦会議を行った。
「…明日の計画はこれでいい?」
みんなを見渡してから、声を上げたバースター。
「よし!じゃ今日はこれで、解散!」
朝7時、眠りから目覚めた少年は大きくあくびをしてから、そのままベッドの上で座ってた。
「また時雨さんと喧嘩したな、俺。」
(怒ってたのは仕方がないかもしれないが、時雨さん結構落ち込んでるらしい、いい過ぎかな俺は。)
この少年は、外見も声も違うけど、実際はあのバースターです。少年の名前は「上野正人」、ごく普通でありふれた高校生、同時に新世代型MMORPGゲーム《シン・オブ・ウォーズ》のプレイヤーです。
「にーさん、ご飯できたよー」
ドアを叩いているツインテールの女のは正人の妹「上野凛香」。
「わかった、すぐ行くー」
返事しながら頬をつねて。
「よし、今日も学校頑張ろう、ゲームはゲーム、リアルはリアルだら。」
「…ごちそうさま、じゃ行ってくる。」
「はい、行ってらっしゃーい。」
挨拶をしてから、凛香は頭を下げて、小声で呟いた。
「行ってらっしゃい、『バースター』くん。」
ソードアート・オンラインが好きと自分もMMORPGゲームにすごくハマっちゃていますので、いつか自分もMMORPGゲームを舞台にして、小説を書きたいなって思っていました。以前はいっぱい書いて、しかし誰かに見せてあげるなんて全然考えたことはないです、自分の実力は流石にわかります。自分が作った物語をみんなに見せてあげるのはこれがはじめてです。どうぞよろしくお願いいたします!