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のぞみはほとんど新品同然の制服を久しぶりに着た。学校の記憶なんてほとんどなかった。ずっとアイドルばかりに夢中になっていた。勉強も全然しなかった。(興味があるのはアイドル活動でも役にたつ語学くらいだった)
のぞみが全然通えていない高校の制服を着ているのには理由があった。それは彼がそのことをのぞみにお願いをしたからだ。そのお願いを聞いて最初のぞみはすごく驚いた。それで理由を聞くと、しずくは「普通の高校生の君を見ておきたいんだ」と言った。
そのしずくの言葉を聞いて、のぞみは家から制服を着て今日は森の中にやってきた。
しずくの年齢は十八歳だった。「十八歳になったとき、なにか特別な変化とか感じましたか?」とのぞみは言った。普段スカートをはかないのぞみは短めのプリーツスカートがとても気になった。白いスクールシャツの上には羊色のセーターを着ていたのだけど、今はそれは脱いでいる。「とくになにも感じなかった。誕生日も忘れていたくらいだったから」と制服姿ののぞみをじっと新しいキャンパス越しに見つめながらしずくは言った。(のぞみはその言葉を聞いてとてもしずくさんらしいなと思った)
やっぱりなんとなく落ち着かないな。白色の靴下を履いている自分の足の指を小さく動かしながらのぞみは思った。