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歌えなくなって、自分の大好きな声を失って、絶望したのぞみはその救済のために大好きな音楽を求めた。
でもどんな音楽ものぞみを救ってはくれなかった。それはきっと音楽のせいではない。のぞみの絶望の理由の一つに音楽があったから、音楽はのぞみを救ってはくれなかったのだ。大好きな音楽が大嫌いになった。体はちっとも動いてくれなくなって、ダンスを踊ることもできなくなった。(無理をするとすぐに吐いたり、体が震えて立つことができなくなったりした)
確かに私は限界なのだと思った。
無理をしすぎたのかも知れないし、焦りすぎたのかも知れない。あるいは人生が上手くいきすぎたことの幸運と不運の反動がやってきたのかも知れないと思った。ちょうど天秤が釣り合うように、私の人生の幸運と不運のバランスが取れたのだと思ったりもした。
「人生には休息が必要だよ」といろんな人がのぞみに言った。「長い休日だと思えばいい。今まで日曜日なんてなかってんだから、その分の日曜日が一気にやってきたんだと思えばいいんだよ」と誰かが言った。そんな言葉を聞きながらそんなに休んでばかりいたら、私の居場所なんてすぐにどこにも無くなってしまうよ。みんな私のこと忘れてしまうし、私は顔も体も声もなんにもなくなって、透明になって、誰にも必要にされなくなって、泣いてしまって、それからある日、ぱっと、まるで魔法みたいにいつのまにかに消えてしまうんだよ。と思った。(実際にそうなるとこのときののぞみはそう思っていた)