55 小さな家の明かり
小さな家の明かり
「ねえ、お母さん。お母さんはどうしてお父さんと結婚したの?」
ある日の夜。めぐみは言った。
「うーん。どうしてだっけ?」と言って、のぞみはいたずらっ子の顔をしながら、しずくを見る。
しずくはそんなのぞみを見て、それからめぐみを見ると「僕がお母さんのことが大好きだったからだよ」と言った。
そのしずくの言葉を聞いてめぐみとのぞみは二人一緒にその白い頬を真っ赤な色に染めてにやにやとだらしない顔で笑った。
時間が過ぎてめぐみは眠ってしまった。
「寝ちゃた」
のぞみは言う。
「僕たちも寝ようか? 夜も遅いからね」としずくは言った。
「はい」
のぞみは言った。
三人は寝室に移動をする。
小さな家の明かりが消えた。
「おやすみなさい。しずくさん」
「うん。おやすみ。のぞみ」
そんな優しい声が聞こえる。
「おやすみ。めぐみ」
二人の声が、森の夜の中に聞こえた。
小さな家のリビングには一枚の小さな絵が飾ってある。
その絵の題名は『秘密』。
二人が出会ったころの思い出の一枚の笑っているのぞみを描いた素朴な絵だった。
……これ、秘密ですよ。
実は私、……好きな人がいるんです。 終わり