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人生に不思議なことはなにもない。
あるのは正当な評価と自分の人生においてどれだけ努力をしたのか、その結果だけだ。
とのぞみは事務所からよく言われていた。
のぞみの所属している世界的に有名な事務所ではのぞみだけではなくて日々生まれてくるアイドル(もしくは新しい才能たちに)つねにそんな言葉を言っていた。
評価とはそのすべてが正当なものであり、正当なものとは世間の評価そのものであると言う。たとえその裏にどんな嘘があったとしても、それをふくめて正当な評価なのだと言う。努力も同じ。才能や嘘。虚像。作られた偶像。そのすべてをふくめて努力と言うのだとのぞみに言った。
アイドルであるのぞみにはその言葉が本当のことであると身をもって(本当に心から)そうだと信じることができた。
それくらいプロの世界は競争が激しくて、そして誰にでも公平だった。
激しい競争の中で、大きな流れの中で、夢を見るたくさんの才能たちがその流れにのまれ、どこかにいなくなってしまった。
幸せとはなんだろう?
私が目指した、憧れた夢はいったい、どこに行ってしまったんだろう?
あの光景は、風景は、幼い私が見た本当はこの世界のどこにも存在していないただの幻想だったのではないだろうか?
そんなことを夜、疲れて眠りに落ちる前にのぞみはよく考えていた。
夢を真っ直ぐに信じることができなくなると言うことは自分を信じることができなくなるということだった。
そのことにこのときのめぐみはまだ気がつくことが全然できていたかった。