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割れてしまったコーヒーカップを片付けてから、しずくはいつものようにのぞみをモデルにしてのぞみの絵を描き始めた。
でもその日のことをあんまりのぞみは覚えてはいなかった。
のぞみの頭の中はめぐみのことでいっぱいだったからだ。(しずくはいつも通りのしずくだった。そのことだけはしっかりと覚えていた)
森が紅葉し始めて、その美しい赤色や黄色を見つめながら季節の変化は本当に早いものだとのぞみは思った。
のぞみは紅葉の森の中をいつものように愛車の真っ白な自転車に乗って走っている。
服装は変化をした。いつもの白いパーカーと白いミニのハーフパンツではなくて、のぞみは赤いコートを着て、白の上着とラクダ色のハーフパンツをはいていた。
自慢の長くて細い足には黒のタイツを履いている。
世間ではアイドルで言うところの世代が一つ進んでいた。そんな情報を事務所から受け取って時間は残酷だなとのぞみは思った。
冷たい風が森の中に吹いている。その風の中には数枚の落ち葉が舞っていた。
しずくの家につくとしずくはいつものように家の外にいて、そこにある切り株の椅子に座って秋の真っ青な空を見ていた。
しずくは亜麻色のコートを着ている。ゆったりとした青色のズボンを履いていて、足元は皮のサンダルだった。