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「その絵は君が買ってくれた絵だね」と作品集を見ていたのぞみの背後から本を覗き込むようにしてしずくは言った。(家にあるものは好きに使ってくれていいとしずくから許可をもらっていたのぞみはしずくの作品集を見ていた)
「森の中の妖精」
とのぞみは絵の題名を言った。
「その絵を見て君はこれは自分だと思ったと言ったよね」
「はい。今もそう思っています」
あのあの中にいるのは自分だった。
間違い無く。確実に。私自身だった。
「あの絵の少女にはモデルがいるんだ」としずくは言った。
「めぐみさんですか?」
のぞみは言う。
「うん。そうだ。あの絵の少女のモデルはめぐみだ。雪の降る日の森の中で遊んでいるめぐみを見て、僕が描いた絵なんだ」としずくは言った。
なんだ。やっぱりそんなんだ。とのぞみ思った。
なんと無くそんな気はしていた。
あの絵の中には確かに愛が溢れていた。しずくの愛が。隠されることなくめいいっぱい(それこそ小さな絵の枠から溢れ出す程)詰め込まれていた。
いいな。羨ましい。
のぞみは本当の本当に久しぶりに嫉妬を感じた。誰かを羨ましいとおもったのは、もしかしたら生まれて初めての経験かもしれなかった。