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「しずくさん。一緒に雪を見ませんか?」とのぞみは言った。
「雪?」としずくは言った。
休憩中ののぞみとしずくは二人でアトリエの大きな壁一面の窓を開けて、そこから森に降る雨を見ていた。
「はい。今、一緒に雨を見ているから、今度は一緒に雪を見たいんです。しずくさんと一緒に」と甘える声でのぞみは言った。
「だめですか?」
「ううん。だめじゃないよ。そうだね。今度は一緒に雪を見よう」とのぞみを見てしずくは言った。
それから少し作業をして、しずくはお昼寝をすると言ってソファの上で眠ってしまった。(それは良くあることだった。しずくは猫のようによく眠った)
しずくが眠っている間にのぞみは洗濯した服を乾燥機の中に入れて乾かした。コーヒーを淹れてそれを飲んだ。そらからのぞみはアトリエにある数枚のしずくの描いた森の風景画を眺めた。そこには森の四季があった。のぞみの知っている森の風景もあったけど、のぞみの知らない森の風景もあった。とくにのぞみの目を引いたのは春の色とりどりの花が咲いている美しい色彩の森の絵だった。
綺麗。なんて綺麗な絵なんだろう。とのぞみは思った。