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まず着替えを用意してからのぞみはお風呂場に向かった。
しずくの家のお風呂場は木の材質で作られているお風呂だった。木のいい匂いがして、それだけで気持ちが柔らかくなるような気がした。
脱衣所で濡れた服を抜いでそこにある洗濯機に入れてスイッチを入れた。(もちろんそうすることはあらかじめしずくに了解をとってあった)木の浴槽にはお湯がたっぷりとはってあった。入浴剤が入っているのかお湯には色がついている。温かいお湯のシャワーを浴びると気分がとても良くなった。
白いタオルでごしごしと体を洗ってから、のぞみはゆっくりと浴槽に浸かった。
「はぁー」と自然と声が出た。
すごく気持ちいい。朝からお風呂とは贅沢だ。とのぞみは思った。
それからものの少ない綺麗なお風呂を眺めてから、のぞみは湯気の煙る木の天井を見つめた。
のぞみはたくさんの男性から今まで恋の告白をされてきた。でもそのすべてをのぞみは断ってきた。もっともっと歌の練習やダンスの練習をしたかったし、恋愛なんてしてる時間はどこにも存在していなかったからだ。それに本当に好きな人とも出会わなかったからかもしれない。たとえばもしあのころに私がしずくと出会っていたら、私はやっぱりしすぐに恋をして、歌やダンスの練習をほっぽり出して、今のようにこうしてしずくに会いに来てしまっていたのかもしれない。実際にどうなのかはよくわからない。でも自信がない。それくらい今ののぞみはしずくのことが大好きだった。