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1 おはよう。まだ、眠いの?

 ……これ、秘密ですよ。

 実は私、……好きな人がいるんです。


 私は今一人で森の中の道を自転車に乗って走っています。

 ずっとひとり。

 でもちっとも寂しくなんかありません。

 ちっとも怖くなんてありません。

 だってこの道の先にはあなたの家があるから。

 この道の先にあなたが私を待っていてくれるから。

 だから私は大丈夫なんです。


 おはよう。まだ、眠いの?


 のぞみは森の中の小道の上を愛用の白い自転車を立ちこぎしながら軽快に走っていた。のぞみは『彼』の住む家に向かってる。

 のぞみは無地の白い色のパーカーに短いハーフパンツというラフな格好をしている。

 森を抜け、彼の住む家の前まで到着すると、そこにはすでに彼の姿があった。彼は玄関先にある切り株を椅子の代わりにしてそこに腰掛け、空を見ていた。のぞみはなるべく音を立てないように気をつけて自転車を止めたが、彼はのぞみの存在にすぐに気がついて彼女の方に視線を向けた。

「こんにちは」とのぞみが言う。

「こんにちは」と彼が答えた。

 彼はゆっくりとした動作でそこから立ち上がり、のぞみのところまで歩いてやってきた。その間、のぞみの心臓はすごくどきどきしていた。

 時刻は朝。

 まだ森が眠りについている時間。

 二人はそこで少しの間、鳥のさえずりと一緒に、とても些細な会話をする。

 会話が終わると彼はいつものように少しだけ顔を伏せ、なにか考えごとをし始めた。のぞみは気になって、その顔を覗き込もうとして自分の顔を下に倒していくと、あるところで彼とのぞみの目があった。彼はのぞみの目を見て一瞬、きょとんとした表情になったあとで、のぞみに向かって微笑んだ。のぞみも同じように笑顔を返す。彼は本当によく笑うようになった。きっとそれは、少しくらいは私のおかげだとのぞみは思った。

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