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勇者の師匠  作者: 新嶋紀陽
第三章
44/74

 見渡せば風情がある庭園。金が掛かっているようには思えないが、しかしそれでも見るものに何かしらの感慨を思わせる。

 貴族達にとってはこういうものはまったりとした空間で、ゆったりと見るものなのだろう。

 しかして、今、この場にはそんなまったりやゆったりといったものとはかけ離れた事が行われていた。


「はぁっ!!」

「おっと!」


 ベルセルクは愛用の剣を振り下ろし、その一撃をレイクは身軽な身のこなしで避ける。

 すでに彼らの戦いは始まっていた。

 見てみると、庭園の数箇所がまるで抉られたような跡が残っている。誰が何をしたのか、それは言わずとも分かるだろう。

 そして、その数はおよそ十以上。それだけ、ベルセルクが強い一撃を放った事が読み取れる。

 だがしかし、レイクには一撃どころか、かすり傷一つも与えられていなかった。それどころか、彼は相変わらず余裕の笑を見せていた。

 ベルセルクはとてつもなく不愉快な顔をしていた。それは、単に自分の攻撃が一つも当たらない事も理由に入るのだろうが、それだけではない。

 レイクはこの戦いが始まって一度も攻撃をしてこないのだ。

 ベルセルクの攻撃をかわし続ける、または防ぎ続けるのどちらかしかやっていない。ついでに言うと、彼の武器はステッキだ。それも、どこにでもある普通のステッキで、ベルセルクからしてみても何かしらの仕掛けがあるとは到底思えない。

 これが使い慣れている、とレイクは言っていた。

 断言しよう。

 確実に馬鹿にされている。

 攻撃せず、ただ防御に徹する。こちらだけが体力を大幅に消耗する。これ以上、歯がゆいことはそうないだろう。

 そして、それは誰にでもできることではない。息も切らせず、未だに体力の底を見せないレイクは、やはりただ者ではないのだろう。

 まだ疲れてはない。スタミナは十分に残っている。が、しかしこのままでは埓があかない。

 苛立ちを募らせたベルセルクは、それを力に変えて剣を握り締め、そのまま『裂破』を放つ。


「っ!!」


 声は上げない。だが、確かに強力な『裂破』が放たれる。

 ドゴンッ!! という凄まじい轟音が鳴り響き、再び地面が抉られた。

 しかし、手応えはまるでなかった。空振りしたらしい。

 その証拠として、レイクが数メートル離れた場所からベルセルクを見ていた。

 まぁ、予想はしていた。『裂破』は威力は強いが、その分タメがある。そして、そのタメとタイミングを計り相手にぶつける瞬間に腕の力を入れることで驚異的な威力を放つ技だ。そのため、速さに関しては若干遅くなってしまう。

 攻撃してくる相手ならいざ知らず、回避に徹している相手に『裂破』は少々無謀だったか。


「中々の威力ですねぇ。当たっていたら、ただじゃすみません」

「……、」

「速さもかなりのものですが……やはり力に頼った技。避けられない程ではありませんね」


 今しがた自分で反省していた所を指摘されることがこれほど腹が立つとは知らなかった。自分で考えを改めるのはいい。しかし、それを他人に言われると無性にイラついてしまう。

 しかし、レイクが言ったことは本当のことだ。避けに徹している彼に『裂破』をこれ以上放つのは得策ではない。

 ならば、他の技を使うまで。

 ベルセルクは剣を大きく左へ移動させる。

 瞬間、すかさず剣を右へとおお振りし、『裂風』を巻き起こす。

『裂風』は瞬時に剣を移動させた時に巻き起こる風が衝撃となって相手を襲う技。所謂カマイタチという現象のようなものだ。

 ただし、カマイタチとは違って切れ味の能力はほぼない。

 だが、その威力は岩石をおも砕く威力くらいはある。

 もちろん、人間がそれをまともにくらってしまえば、ただでは済まない。

 そして、今回は一撃だけではない。

 ベルセルクは次々と『裂風』を繰り出していく。その度にズゥン!! という空気の振動の音が耳に入ってくる。

『裂風』の速さは正しく音速。音を超えた速度だ。そんなものを乱れ撃ちしているのだ。その数およそ一秒で五発程。

 流石にこれは、かわせないだろう、とベルセルクは一瞬そう思ってしまった。

 相手が、ただ者ではないということを忘れてしまっていた。

『裂風』が放たれた瞬間、いやその前にレイクは行動を起こしていた。その場でステップを踏み、まるでダンスを踊るかのような足さばきで、『裂風』を回避する。

 ありえない、とは思わない。恐らく原因はいたってシンプルだ。そして、その原因をレイクが頼んでもいないのにべらべらと喋りだす。


「いい技ですねぇ。速さはまさしく音速、といったところでしょうか? これは、中々編み出せるものじゃありませんよ。しかし、技を放つ時のモーションが大きいため、どこにいつ来るのかが分かってしまいます。後、あまりコントロールができていないことが弱点と言えば、弱点ですかね」


 またしても、分かっているのに指摘されてしまう。

 そう、この『裂風』は技そのものは速いのだが、その前のモーションが大きい。連続的に放つとしても、最初の攻撃で大きく振りかぶるか左右どちらかに剣を移動させなければならない。その瞬間を見破られれば、どこにどのタイミングで放たれるのかなど、造作もないことだ。ましてや、それが手練た奴であるのなら尚更だ。

 そしてもう一つの理由。それは、ベルセルク自身がこの技を完全にコントロールできていないことだ。

 今、この瞬間のベルセルクとレイクの距離は二十メートル前後。その距離でなら、人間を外すことない。しかし、若干のズレはやはり生じる。その原因は、日頃からベルセルクがこの技をあまり使わず、『裂破』しか使わないこと。そして、ベルセルクという人間が、そもそも雑であり細かな作業が苦手だからである。

 ベルセルクは舌打ちする。

 戦いに関して、自分の攻撃が全く当たらないという状況、そして相手が全く攻撃してこないという苛立ちなど、久々である。そして、やはり胸糞悪い。

 ベルセルクの技は完全に封じられた。

 いや、その言葉は少し語弊がある。別にベルセルクの技が『裂破』と『裂風』だけだというわけでない。彼にはさらに技がまだ少し存在する。それも、『裂破』や『裂風』を凌駕するほどの威力を持つものが。

 だが、今、この状況ではそれも意味をなさないだろう。避けられてしまう可能性が大いにある。

 ならば、やることは一つだ。

 ベルセルクは剣を肩に担いだ。

 そうだ。技なんてものに頼る必要はない。技なんて正直『裂破』だけで十分だ。それさえあれば、そしてそれを叩きつけることができれば、目の前にいる敵を潰すことができる。

 ベルセルクは目を据える。獣の目、と言い換えてもいい。獲物を見つけ、それをじっと観察する。いつ、どのタイミングで襲いかかるかをフル回転で考える。

 ベルセルクの変化に気づいたのか、レイクは一瞬「おや?」と首を傾げる。が、すぐに先程と同じ笑顔に戻る。

 だが、その笑みは先程と同じで、しかして違う。

 同じ笑っていない瞳。だがしかし、先ほどとは違って、それは今のベルセルクと同じものだった。

 そう、獲物を狩る猛獣の瞳。

 そして、ベルセルクもまた、彼の変化に気づいた。

 上等だ、とベルセルクは不敵に笑う。

 レイクがどうして変化したのか、何が原因なのか。そんなものに、興味はなかった。ただ、分かるのはレイクがベルセルクと本当の意味で戦おうと思ったこと。そして、そのことに興奮し、歓喜を覚える自分がいることだった。

 ようやく、まともな戦いができる。

 そうして、ここから本当の戦いが始まったのだった。


 *


「ほぉ……レイクの奴、本気でやるつもりだな」


 一方その頃、ベルセルクとレイクが戦っている中、シナンは傍からギルバートと共に見物していた。


「あのレイクが真面目に戦う気になるとは……やはり、売り込みにくるだけの実力はあるということか」


 ギルバートは少々驚いた顔になるも、その口元はニヤついていた。彼にとって、レイクが本気を出すことは面白いと思えることなのだろう。

 それを見て、シナンは一言。


「レイクさんが本気になるのって、そんなに珍しいんですか?」

「ああ。あれは面倒臭がりやな性格と『とある事情』によって、本気を出さないでいる。だから、貴様達のような奴が来た時は、適当に攻撃を避けて、スタミナが切れたところを突く、といった戦法をしている」

「それって何か……」

「卑怯、か? だが、避ける方にもそれだけの技術がいる。そして、それだけの実力をレイクは持っている。それを超える人材でない以上、俺には必要ない……だが、あの男はレイクを本気にさせた。それだけ、レイクがあの男を買っているということだ。これ程珍しい事はそうそうない。いや、もしかすれば、初めてかもしれないな」


 くくくっ、と声を漏らして笑うギルバート。何だかこの人もこの人で、性格悪そうだなあ、と自分に関わる年上の男性が何故か性格が悪いということを改めて知るシナンであった。

 しかし、あのレイクという人は一体何者なのだろうか。

 シナンの師匠であるベルセルクの攻撃をああも簡単に凌ぎきるとは。シナンでさえ、彼の攻撃を避け切れるのはそう多くない。逆に避けられる方が多い。

 別に、シナンはベルセルクが世界最強の剣士、などとは思っていない。むしろ、彼はそういう事を思われるのがあまり好きではないはずだ。何故なら、ベルセルクは自分より強い人間と戦いたい人種である。ならば、自分が最強であると認識していれば、そこには若干の矛盾が生じる。

 ベルセルクは最強ではない。だが、並外れた強さを持っているのは事実だ。それ故に、シナンは彼の弟子になったのだから。

 そんな彼と戦い、そして今もなお余裕の笑みを見せているレイクもまた、底知れぬ力をもっているはずだ。正直、先程レイクが用心棒と聞いた時、シナンはまさか、と思ってしまったが、今なら訂正することができる。彼の本気とやらはまだ見ていない。だが、それでも用心棒をやりきる実力があるのは明白だ。

 何もかもが謎に包まれている執事。

 気になるところではあるが、恐らくそれを聞いても正直に答えが返ってくるとは思えない。

 などとシナンが色々と思案していると。


「ところで……貴様達のツレはどうした?」

「へ? ツレって誰の……ああ!?」


 シナンはギルバートの言葉であることに気がついた。

 リッドウェイがいないのだ。

 ベルセルクとレイクが戦うその瞬間まではいたはずだ。だが、その後どのタイミングでいなくなったのかは把握できていない。そもそも、影が薄く気配を感じ取るのがとてつもなく難しい彼がいついなくなったのか、そんなものシナンにわかるわけがなかった。


(何やってるんですかリッドウェイさん……!!)


 この旅をしている中で、いろいろと理解不能なことは多いが、リッドウェイの行動はまさしくその上位に入る。彼がどうやって情報を集めているのか。また、以前は何をやっていたのかなど、シナンは彼のことについて全く知らない。そのためか、彼が何を考えて行動するのか、時々分からなくなってしまう。

 今、この状況のように。


「……すみません。多分、トイレじゃないかと……」

「俺に一言も告げずにか? ハッ、中々大した男だ」


 恐らく嫌味なのだろう。いや、絶対にそうに違いない。

 まぁ、それを言われても仕方ない。館の主に何の許しもなく館を歩くなど、普通なら考えられない行動だ。ましてや、今、自分達は売り込みに来ているのだ。相手の印象を悪くしてしまっては元も子もない。

 もう、ホントどこに行ってるんだか……まさか、本当にトイレだろうか? などとシナンは少々不安になってきた。

 だが、そんな不安も次の瞬間、かき消される。

 ガギィィン!! という激しくて甲高い音が鳴り響いたのだ。

 これは、鉄と鉄がぶつかり合った時の音。そして何より、ベルセルクの剣戟が届いたという音だった。

 シナンが振り向いた瞬間、そこには有り得ない状況になっていた。

 なんと、ベルセルクの剣をレイクは自分のステッキで受け止めているのだ。

 恐らく、レイクのステッキは鉄製か何かでできているのだろう。それにしても、あんな細いもので、よくベルセルクの一撃を止められたものだ。自分なら、絶対に無理である。

 シナンは彼らの顔をみる。互いにシニカルな笑みを浮かべていた。戦いの中で、ああいう顔ができる人種は決まっている。戦いが好きで好きで仕方のない連中だ。

 そんな彼らの戦いは決まって激しいものになるのが決まっている。前のベルセルクとアーヴィンの戦いがまさしくそうだったように、今回もまた同じ様になるだろうとシナンは予測する。

 そうして、シナンはリッドウェイの事など放って置いて、取り敢えず彼らの戦いを見守ることに専念する事とした。


 *


 攻撃が当たる。

 手応えもある。

 そして、相手もまた攻撃をしてくる。

 これぞまさに戦いだ。退屈な時間から開放され、確かな戦闘の中に身を投じる。

 やはり、レイクという男の力は異常だった。鉄製のステッキとはいえ、その形はほっそりとした棒だ。そんなもので、ベルセルクの一撃一撃を受け止め、流したりしている。その事実にベルセルクは自分の実力の無さを思い知らされると同時に、彼の強さに興奮していた。

 こういう環境。こういう状況。こういう場面。

 強い相手と戦っている今この瞬間こそ、ベルセルクは生きていると感じとれる。

 ベルセルクは剣を振り上げ振り下ろす。その動作をやくコンマ五秒でやってのけた。流石のレイクもその攻撃を完全には避けきれない。彼の頬に軽く、切り傷が入る。

 レイクはそのまま後ろへと飛び、距離を取った。そして、自らの頬に手をやり、切り傷から出る血を指でなぞる。


「ぞくぞくさせてくれますねぇ……本当に面白い人だ」


 自分が傷ついたというのに、平気な顔で笑っていられる。やはり、レイクもまたベルセルクと同じくらい狂っている人間なのだろう。

 だが、そんなことはどうでもいい。

 そもそも人が狂っているというのは、どこの誰が決めるのか。他人か、それとも神とかいうものか。なんにしても別に構わないが、一つ言うとするのならば、狂っていると決め付ける者が狂っていないとどうやって証明できるのか。

 極論を言ってしまえば、人間誰しも狂っているのだ。それを表に出すか出さないか。ただ、それだけの違いに過ぎない。

 そして、ベルセルクとレイクはそれを表に出しやすい性格なだけなのだ。


「ふんっ!!」


 鉄製のステッキの先がベルセルクの顔めがけて突き出される。

 丸く、そして尖ってないステッキの先。しかして、そんなモノでもレイクの手にかかれば、凶器に成り代わる。

 シュンッ! と風を切る音がベルセルクの耳に伝わる。

 間一髪の所で、首を曲げ何とか回避するベルセルクだったが、その頬にステッキの先が掠った。

 苦い顔をしながら、ベルセルクはレイクを下から斬り上げようとする。しかし、レイクは華麗なステップでそれを避ける。

 ベルセルクは左手で、頬を拭う。そして気づく。

 今、ベルセルクが拭っている場所は、先ほどベルセルクがレイクに切り傷を負わせた箇所と同じだということに。

 野郎、と思いながらベルセルクはレイクに視線を寄せる。すると、先程のお返しだと言わんばかりな表情でこちらを見ていた。

 明らかな挑発行為。しかし、それはこの状況でもレイクは未だに余裕があるということを意味している。

 ベルセルクも全力を出しているわけではない。まだ、少しばかりは力を温存している。だが、それでも挑発できる立場にはいない。

 やはり、目の前にいる敵は、ベルセルクよりも強い。

 だが、いやだからこそ、面白く、そして興奮するのだ。

 自分よりも弱い人間を倒した所で何になる?

 自分と同じくらい、または自分より強い者と戦っている時に感じるこの興奮。

 それこそ、ベルセルクが求めているものだ。

 故に、ベルセルクの口元が笑っているのは、当然といえば当然だ。

 ベルセルクは剣を握る力をさらに上げた。

 視界をレイク一点に絞り込む。そうすることで、余計なものを一切取り除き、レイクの動きに集中するのだ。

 そして、力を溜める。

 正直な話、これ以上戦いを長引かせることは得策ではない。自分より強い者を相手に長期戦は不利だ。ならば、短期戦、つまりは次の一撃でけりをつける。

 今なら、レイクに『裂破』を叩き込める可能性もある。その理由は、レイク自身も攻撃をしてくるからだ。レイクが攻撃してくる瞬間、『裂破』を叩き込めば、恐らくベルセルクは勝てる。『裂破』はその名のとおり、破壊に適した攻撃。今までのベルセルクの攻撃を受け止められたとしても、『裂破』をまともに受ければ、あのステッキとて無事ではすまない。鉄製であろうと、木っ端微塵に粉砕する自信がある。

 後は、タイミングの問題。レイクを誘い、彼から攻撃させる、というのが前提の話だ。焦って自分から出ては何の意味もない。

 レイクも何か策があるのか、ベルセルクの方を観察するように見ていた。

 にらみ合いが続く。強者との戦いには付き物とはいえ、やはりこういう状況は好きではない。だが、自分から出ても『裂破』は入らない。どうしようもないジレンマの中、ベルセルクはただ機会を待つ。

 そして、それはやってくる。


「ッ――-」


 無言のまま、レイクがベルセルクに向かって飛び込んでくる。

 来た。ようやく来た。

 ベルセルクはレイクより一歩遅れて前に出る。反応が遅い、と言われても仕方がないが、それでもベルセルクには負ける気はなかった。

 互いの距離が零になった時、先に攻撃を仕掛けたのはレイク。すでに、ステッキは振り上げられていた。いや、ベルセルクとゼロ距離になった瞬間に、振り下ろしていた。

 ステッキがベルセルクの顔面に迫る。いくら武器ではないといっても、鉄製のモノを鈍器のごとく食らってしまえば、怪我をするだけでは済まない。

 ベルセルクは体を反転させ、ステッキから逃れる。ステッキは空振りし、レイクの攻撃は失敗に終わった。

 反撃だと言わんばかりに、ベルセルクは反転させた勢いを使ってレイクに『裂破』を叩きいれようとする。

 これが決まれば、勝てる―---!!

 

「そこまでっ!!」


 ギルバートの声が轟く。

 瞬間、ベルセルクの剣が止まった。その刃の数ミリ先には、レイクの顔がある。

 もう少し、という所で止められたせいか、ベルセルクはイラッとした表情でギルバートを見た。

 それに対して、ギルバートは不敵な笑みでベルセルクを見返す。


「悪いがそいつはうちの大事な執事なんでな。殺されては困る」

「なら、初めから戦わせるな」

「貴様の実力を知るためだ。仕方ないだろう? それに……貴様がレイクと互角とは思わなかったんでな。少々甘く見ていたようだ」

「……、」


 言われて、ベルセルクは剣をレイクからどける。


「いやぁ、助かりました~。あとほんの少しでも遅れていたら、死んでいましたね、ハイ」

「笑顔でそんなことを言われても何の説得力もない。というか、油断しているからそうなるんだ」

「油断なんて滅相もない。ワタシは本気でしたよ。少なくとも、殺す覚悟で行くくらい」


 ニコリ、とベルセルクの方を見るレイク。その表情には先程までの戦いが嘘のように思えるほどの笑みがあった。

 本当に、いけ好かない男だ。

 と、ベルセルクが思っていたそんな時。


『きゃああああっ!?』


 突然と、少女の悲鳴が聞こえてきた。

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