第1話 平和な国の王子たち
これは、世界が今よりずっと荒れていた頃の物語。
世界は4つの大国と無数の小国に分かれていた。
国家間では、日常的に戦争が起きていた。
小国が大国に制圧されたり、新たな小国が独立を宣言したり。
そういったことが頻繁に起きていた。
国境が定まってすらいない地域もあった。
一方で、一部の大国は比較的平和でだった。
大国相手に戦争を仕掛けるような小国は滅多になく、大国から戦争を仕掛けることも少ないからだ。
4つの大国のうち、2つは国境を接していた。
生成と消滅を繰り返す小国とは違い、大国にはそれなりに長い歴史があり、隣接する2大国の間には浅からぬ交流があった。
王同士での交流はさることながら、王家同士での付き合いもあった。
王族たちからすれば、国内には自身の境遇に共感できる人はおらず、隣国の王族は立場や境遇が近い唯一の友と言えた。
王族同士の関わりは、後の王、すなわち王子たちにおいても同様であった。
王子たちの名は、グラム、そしてシュミット。
彼らの交流は、王同士の会談についていったことが始まりだった。
王の用事が終わるまで、二人で親睦を深めるように言われていた。
初対面であるため、少なからず緊張していたが、一度話を始めれば話題が尽きることがなかった。
王子たちは自分の思いを隠さずに打ち明けられる相手がまだいなかったのだろう。
日々の勉強、食事、召使い、自国の文化、王子としての将来、両親への不満。
どんなことでも話していた。
境遇が近く、思うことや感じること、気になることがかなり近いのだ。
それでいて、詳細が異なっていて、互いの話がとても興味深かった。
時間も忘れて話し続け、王の用事が終わり、帰る時間になっていた。
本音を隠さずに打ち明けられる、初めての友を見つけた王子たちにとって、半日程度は一瞬で過ぎてしまった。
王の用事に関係なく、二人だけで話す時間がもっと欲しい。
それが、王子たちの共通認識だった。