4.魔王?
3話の内容を少し変更しました。
魔王軍幹部に勝利(?)し、逃げ切れたのは良いものの、俺には行く宛ても無く、途方に暮れていました。
「くそぉう、この『魔王の卵』ってスキル何の役にも立たねーじゃんかよ! どんな効果があるってんだよ!」
さっきは木を殴ってもスキルの恩恵を感じませんでした。なので打撃系のスキルではないのでしょう。
「手持ちのお金も、その日暮らしの俺にとっては残りも心許ない。よし、いっそこうなったら……ぐへへへへ!」
何やら悪い事を考えてるタケシ。気持ち悪い笑みが顔に浮かんでいる。
その時だった。
――ピョンピョンっ
気持ち悪い笑みを浮かべているタケシの前に、一匹のスライムが現れた。
ポヨヨンとした体に、何処か美しさを感じられるボディライン。何とも可愛らしい。
「おいおい何だ、スライム風情が俺に何の用だ? ふっ」
スライムを前にしても俺は動じません。最弱冒険者の俺といえども、最弱モンスターであるスライムには絶対勝てるという自信があるからです。
「スラッ、スラッ」
「ふっ……可愛いお前を倒すのも癪だが、ユニークスキル『魔王の卵』の能力を試す良い機会だ。悪く思うなよ、スラ坊!」
スライムには絶対勝てるという自信を裏付けるものには、『魔王の卵』があるからと言う理由もあったのです。
「スラッ、スラッ?」
「可愛く振る舞っても容赦はしないぜ? なんたって俺は冒険者なのだからな! モンスターを倒す事が俺の仕事なんだぜ! 行くぜ! スラ――」
――ズゴォッ
スライムが俺の脇腹に突進をしてきました。
普段筋トレを全くしない俺の体には、会心の一撃でした。
「ぐはァっ! 魔王軍幹部に勝利(?)した、この俺を倒すとは……中々やるな。お前、本当は魔王じゃないのか?」
「スラッ?」
スライムはうつ伏せに倒れている俺の背中でピョンピョン跳ねています。
「スラッ、スラッ!」
そしてスライムは去って行った。
「あぁ……冒険者であるこの俺にとどめを刺さずに去って行くとは……何たる慈悲深いお方! あの方こそ、魔王に違いない!」
とんでもない勘違いをするタケシ。
そもそも、スライムに負ける冒険者など、タケシくらいであろう。
かくして俺は、魔王(?)との激闘の末、何とか生還する事が出来ました。