3.砂掛けのタケシ
よろしくお願いします。
スサノオが呆然とした顔でこちらを見てくる。
まずい、コイツが魔王軍幹部だと……? 俺はこんな所で死ぬのか……まだ童貞だというのに……
冷や汗を流し、スサノオに対して剣を構える。
すると、スサノオが……
「すいまっせぇぇんっ! いやっほんっと、すいまっせぇぇんっ!」
魔王軍幹部のスサノオが俺に対して土下座をする。
「……へ?」
「命だけはァ……どうか命だけは勘弁をォ!」
土下座をしながら、ヘッドバンキングのように頭を振るスサノオ。
もはや、馬鹿にされているように感じます。
「ちょ、ちょ待てよ! なんなのアンタ、意味分かんないんですけど!」
「魔王軍幹部でありながら、貴方様に一瞬でも敵意を向けてしまいました事、これ即ち万死に値します! だがしかし、ここはおいらの顔に免じて許して下さい!」
情報量が多すぎて、俺は困惑しました。
魔王軍幹部だと、俺に無礼を働いてはいけないなんて決まりでもあるのでしょうか?
そして、自分の罪を謝罪してるのに自分の顔に免じて許してくれとは、なんたる厚かましさでしょう。
この厚かましさ、もはやこの俺にも匹敵するかもしれません。将来有望です。
これは見過ごせません。どうやら俺に頭が上がらないようなので、それを利用して無理やり配下にしようと思います。
その前に、なぜ俺に頭が上がらないのか聞きたいと思います。
「あ、あの! なんで魔王軍幹部の貴方が俺に頭が上がらないんですか? 俺はただの冒険者だし、それもFランクなんですけど」
「何を仰いますか! 貴方様こそ、おいら……いや、おいら達を導く、希望の光であります!」
スサノオの目が輝いています。
「何を言っているの? 本当に俺はただの冒険者なんだって」
「貴方様からは、とてつもないオーラを感じます! 先日、”腐れ”勇者に負けて亡くなってしまった、おいら達の主である魔王様と、似つかわしいモノを感じるでやんす!」
あー……この前勇者たちと討伐した魔王の配下だったのか……。
と言っても、俺は影から見てただけで何もしてないんですけどね。
「どうか、おいらと一緒に魔王城まで来てくれよー!」
スサノオが俺の足にしがみついてくる。
「や、やめろー! 執拗いから!
あーあ、本当はお前のこと、俺の配下にしてやろうと思ってたのにな〜 」
目の色が変わるスサノオ。だがすぐさまハッと我に返り、
「おいらは既に貴方様の配下同然! いいから魔王城まで来てくれよ!」
「いやだ! 俺は絶対に行かないんだー!」
「は? しつけーんだよ糞ガキ。さっさと着いてこいや、ボケ」
さっきまで下手に出てたスサノオが、いきなりメンチを切ってきました。
くそっ、こうなったら……
「てやァっ!」
俺は地面を蹴って、スサノオの目に砂を飛ばしました。
「ぐはァっ!」
スサノオが苦しそうに目を抑えています。このうちに俺は逃げようと思います。
「へっへっへー! 俺に勝とうなんざ一億万年早いんだよー!」
「クソがァー! 待ちやがれー!」
こうして俺は、魔王軍幹部スサノオに無事勝利(?)し、逃げ切ることに成功しました。
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