ハンナとリード2
【世界図書館】によってモンスター図鑑のようなものをインストールすることは容易いが、モンスターは無数に存在するためそれらの特徴や弱点、素材となる部位を全て覚えるのは現実的ではない。
それこそモンスターには未だ見つかっていない新種から類似種まで存在している。
魔の森に入ってしまえば新種や危険種などの新発見のオンパレード。本の知識など当てにならない世界なのだ。
だから、近隣のモンスターの情報を得るには、その地区にあるギルドの受付嬢などに聞くことが一番正確。
そう、冒険者の心得にも書いてあった。
「うんしょっ! じゃあ出現するモンスターと注意点、弱点と素材になる部位、出会ったら逃げなくちゃいけない相手の順番で説明していきますね!」
どしん! と大きな音を立てて置かれる図鑑。
思っていたよりも分厚い本に少し慄くリード。しかしハンナの好意を無駄にするわけにはいかない。
「お、お願いします!」
「良い返事ですね! ではまずは、近隣に出現するモンスターの情報から——」
ハンナの説明がはじまる。
特徴や弱点などを読み上げるだけではなく、ハンナ自身から他の冒険者から聞いた特徴や注意すべき点などを織り交ぜながら行われる説明。
モンスターに狙われ続け、そして負け続けたリードだからこそ、その説明に聞き入っていた。
「——つまり、モンスターは体が大きければ必ずしも強いというわけではなく、体内に保有している魔素が多いほど強いということよ。だから、同じモンスターで体が小さい個体にあっても弱いと決めつけてはいけないの。色が少し変化していて身体が小さいとしたら、それは変異種と呼ばれている知能を持ったモンスターだから絶対に戦っちゃダメ! 変異種ってだけでモンスターの危険度は最低でもワンランク上がるから、決して勝てると思っちゃダメ。分かった?」
「分かりました……!」
「うんうん! リードくんは教えたことをどんどん吸収するし、真剣に楽しそうに聞いてくれるからお姉さんすごく教え甲斐があるよ!」
「ハンナさんの教え方が分かりやすいからですよ! 理由までちゃんと説明してくれるので、すごく理解しやすいです!」
「それなら良かった。じゃあ、そろそろ時間だから今日は終わりにしようか」
いつの間にか空も明るくなり、他のギルド職員も増えている。
質の高い勉強で時間が過ぎるのはあっという間だった。




