【1】邂逅
「キール・シュナイザー…1953年11月28日生まれ、ブラッドタイプA、特技は射撃、出身地や経歴は不明……ね。この子が噂の『雷』くんだったかしら?」
「はい、そうです。なんでも、この学年は優秀な者が揃っているらしいのですが…中でもこいつは飛び抜けているらしいですよ。」
「そう…。興味深いわね。即戦力になりそうなら、ぜひうちの隊でとりたいものだけど…まぁ、実際にこの目でみてみなきゃ何とも言えないわ。こんな紙切れで人は判断できない。」
「おっしゃる通りですな。」
射撃場前の廊下を歩く2人の士官の姿に、その場にいた生徒達は目を疑った。
(おい、あれって…!?)
(はぁ?…嘘だろ!?なんでこんなとこにいんだよ!?)
(俺が知るかよっ!!)
ざわつく生徒達に気付くと、女の美しい士官は言った。
「ごめんなさいね〜邪魔しちゃって。私達に気にせず、そのまま続けてください。」
「「はっ、はい!!!!!」」
生徒達は静まり返った。
…1人の男を除いては。
「あの子ね。」
ショートカットの黒髪に、茶色の目。
長身で、あまり軍人とは思えない、タイトな体つきだ。
士官の2人組が来ても全くかまうことなく、的に向かって銃を撃ち続けている。
しかもそれがすべて中心に的中している。
(へぇ〜、やるじゃない。)
女は男の士官に、銃撃を一旦中断させるよう指示した。
「君、シュナイザー君だね?
少し話があるのだよ。
こちらは『ジュピトリア』ウィンストン隊、メアリ・ウィンストン少将でいらっしゃる。
少将が直々に、君と話がしたいそうだ。」
「!?」
さすがに気の強いキールも、驚きを隠せなかった。
メアリ・ウィンストン…『ジュピトリア』四天王と呼ばれる最強の将軍の中の紅一点。
と同時に、最強の強さを誇るウィンストン隊の隊長だ。『ジュピトリア最強』と言うくらいだから、キールはもっと厳ついゴリラみたいな女を想像していた…が。
まさかこんなに普通の、いや、むしろ美人で華奢な女だとは夢にもおもわなかった。
「少将が俺に…何の用っすか?」
「こらお前!言葉に気をつけ…」
少将は男を手で制し、笑顔で言った。
「いいのよヴェス大尉。
初めまして、シュナイザー君。私はメアリ・ウィンストン。地位は少将よ…知ってるかもしれないけどね♪」
「?…初めまして。キール・シュナイザーであります。
将軍自ら、俺に何の用でしょうか?」
「君の優秀な成績を聞き付けたのよ。
随分銃が得意だそうね…さっき射撃訓練見てたけど、大したものだわ。」
「自分にはもったいないほどのお言葉です。」
「あら、私はお世辞は言わない主義なのよ?
…でも、君の本気はあんなもんじゃない気がするんだけどなぁ…私の気のせい?」
「!?」
「何か隠してる能力、あるわね?」
「…なんでもお見通しなんですね。」
「伊達に隊長やってないわよ。」
「…で、それをあなたに見せろと?今ここで?」
「そうゆうこと。」
「いいですけど…たぶん的…壊しちゃいますよ?」
「どうぞどうぞ、ご自由に。」
(的を壊す…一体どうゆうことなのかしら。)
すると、キールが持っている銃が光り出した。金色に。
「…なるほど。」
「少将?」
「彼も私と同じなのよ。」
キールは銃を構えて…撃った。
バリバリバリバリ…
銃撃は雷を纏っていた。