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交渉

「久しぶりだね、エリナ」


 10歳の時、故郷を離れて以来、約8年ぶりの再会。


 仲の良かった彼女との再会は、本来であるならお互い涙を流し、抱き合い、その喜びを全身で表す程の事。


 しかし、現実には、そうならなかった。


 エリナのその身を包む鎧は白地に赤い指し色が入り、その丁寧な作りから今の立場を現している。


 鎧にはルオーレオガワン王国の紋章が刻印されていた。


 そう、今の彼女は彼の国に仕える騎士だった。



「立派になって、幼馴染みとしては、鼻が高いよ」


 彼の国に全く好印象を持っていないシュウであったが、仮にも国の紋章が刻印された鎧を賜る立場になるには、それ相応の努力が認められなければならない。


 スキルに恵まれただけでなく、頑張った成果に対し、シュウは素直に称賛を惜しまなかった。


 しかし、彼女の仕える国がどうこうだけでなく、彼女から感じ取れる別の物が、シュウの想いや感情を捩曲げる。それはデーモン等によるものではなく、人から付けられる物であった。



「それで、ここに来た理由は何だい?再会を喜びに来ただけでは無いのだろう。その紋章から察するに、依頼に関する事かい?」


「あぁ、うん、そうだね。仕事しなくちゃ」


 そう言うと、エリナは緩んだ表情を正し、姿勢を正す。


「高位の狩人たるシュウよ。ルオーレオガワン王国は、貴殿に遺跡調査団の護衛を依頼する。慎んで受けるように」


「断る」


「ふぇ」


 騎士然と振る舞い、彼女の立場としては正しい形で依頼するのに対し、一狩人としてシュウは一言で切り捨てた。


 余りにも即答で返されると思っていなかったエリナは、間の抜けた声を発して、慌ててしまう。自分が頼めば断らないと、心の何処かで思っていたのかも知れない。


「えっと、どうして…」


「素材収集ギルドで、理由を聞いていると思うが」


 その後、いくらか問答を繰り返したが、一歩も譲らないシュウにエリナは諦めてその場を後にした。


 その足は重く、この後に待つであろう、同行している仲間や上司からの叱責が、彼女の足だけでなく、気持ちまでも重くしていた。





 …翌日


 シュウとアマカは、同じ場所で訓練を行っていた。


 すると昨日と同じように、シュウ達の下に複数の人が訪れていた。


 全員で6人。一人は昨日と同じくエリナ。そして、同じ鎧み身を包んだ5人の男性騎士だった。


「貴殿がシュウだな。我らはルオーレオガワン王国、王国騎士団所属、第六部隊。私はこの部隊を預かる団長のガラスープ・ジアモである」


「これは初めまして、ガラスープ殿。狩人をしているシュウと申します」


 作法に乗っ取り挨拶してきた為、シュウも挨拶を返す。しかし、彼らから漂う雰囲気がシュウの機嫌を悪くしていた。


 彼らから感じる物は、これまでも多くの所で向けられる物であった。身分の上下、スキルの有無やレベルの高低、それらから来る差別意識。


 国直属の騎士として、また高いスキルが、スキルゼロのシュウを見下していた。また、彼らのアマカを見る視線は、更に不快にさせるものだった。


 ただ、表面上は問題行動を起こしていないため、一般的な対応を行っていた。ガラスープとの話し合いは、結局昨日の繰り返しであった。


 表面上は取り繕いながらも、我慢が出来なくなったガラスープ。


「おい、貴様いい加減にしろよ。こっちが下手にでてれば調子にのりおって」


 取り繕うのを辞めた彼は、目で部下に合図を送る。すると二人の部下は、そのスキルを活かし、一瞬でアマカの後ろに回り込むと、その両手を掴み、拘束した。


「何のつもりだ」


 声に怒りの思いを乗せ、ガラスープに睨みつける。


「団長、何を…。けっして荒事にはしないとお約束を…」


「黙っておれ。躾と同じだ。上下関係を分からせねばな。お前にも、後でまた躾てやろう」


 下卑た笑みを浮かべながら、ガラスープは強気に出はじめる。


「本来、下流の者等に依頼を出す事自体、間違いなのだ。ただ、これも上からの命令だ。

 おい、そこのスキルゼロのクソ狩人。命令に従え。とっとと街に戻り、依頼を受けてこい。その間。そこのラミアの娘に相手にしてもらうかね」


 ガラスープ達は、アマカを人質に取れば、己のノルマを達成できると考えていた。ただ、彼らには人質という認識は無いのかもしれない。下の者は、上の者に何でも差し出すのが当たり前であり、言うことを聞かなければ、弱みを握る。それが彼らのやり方だった。


「おい、そのラミアは毒を作れるらしい。適度に痛みつけて、集中させるな」


「へいへい」


 返事をした瞬間、アマカを押さえ付けていた二人の騎士は、大輪の紅い紅い花を咲かせるのだった。



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