表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/79

幕間 眠りを守る者

 そこは、薄暗く静寂の支配する世界。


 湖の深い水の底。


 そこには誰の手によって作られたか定かではない粗末な墓標と、それを守る様に横たわる竜が眠っていた。


 竜は、閉じたその目を開くと、ゆっくりと湖面に向かっていく。


 竜は時折湖面に顔を出し、景色を眺める。


 それは、眠る彼女に教えてあげる為。




 今日は雲一つ無いとても良い天気だったよ。


 …もうすぐ季節が変わりそうだよ。


 …今年も君の好きな渡り鳥がやってきたよ。


 …また、あの花の咲く季節がやってくるよ。



 ……君が眠ってから、ここは今でも静かだよ。



 どのくらいの年月が流れたのだろうか。

 どのくらい竜は、それを繰り返したのだろうか。



 そんなある日のこと。


 久しく感じたことの無い強い何か。それが接近してくるのを、竜は感じ取っていた。


 小さな者達が湖に近づく事は多々あったが、それは粗末な事だった。しかし、今感じている何かは、それらとは大きく異なっている。


 根源的な質。そんな物が大きく異なる何かが、空から近づいて来ていた。


 敵意は感じられない。


 様子を見ていると、何時も湖の近くにいる小さき者と接触したのが分かった。


 彼女の眠りを妨げようとする存在では無いと感じてはいたが、気になった竜は直接確認する事にした。


 湖面に顔を出し、竜は彼の者を見た。



「ああ、なるほど…」



 それだけを思うと、再び彼女の元に戻っていった。




 また少し眠っていると、外が騒がしくなっていった。


 多くの小さき者達が近づいて来るのが分かった。


 そして、何時もいる小さき者と争い始めている事も感じていた。



「ああ、小さき者達は、また争いをしているのだな」



 程なくして、彼の者が再来し、事態が収束していくのを感じる。



 そして、それを離れた森の中で見ている、また別の異質の者の存在も感じていた。



 竜はまた、その目を閉じる。


「彼の者は、あの遺跡に行くことがあるだろうか?


 行けたのなら何を思うだろうか?


 そして奴らをどう感じるだろうか?」



 竜は今日も静かに湖の底で、彼女の眠りを守っている。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ