アマカのスキル
「それでは、シュウが独り身じゃ無くなった事と、アマカちゃんを歓迎して、カンパーイ!」
「「カンパーイ!」」
何時もの狩人御用達の店で、シュウ、アマカ、赤竜の爪のメンバーの計6人は、打ち上げを始めていた。
店には多くの狩人が飲んでおり、アマカは注目の的となっていた。
「おい、見ろよ。ラミア族だぜ、珍しいな」
「しかも、真っ白で美人さんときたもんだ」
「うわぁ、ありゃアノ貴族とかが、気に入りそうだな」
「言えてる」
「赤竜の爪に新しく入ったメンバーか何かかね」
「さっきの音頭だと、魔力糸の奴の連れか?」
「クーー、あの胸と腰たまらんなぁ」
「下半身が蛇じゃなきゃイイ感じなのにな、ガハハ」
直接手を出して来る者はいなく、遠巻きに好奇な視線を飛ばして来るのみであった。当のアマカは、初めて見る料理に夢中で、それらには全く気にしていなかった。
しばらく食事を楽しんでいると、チャーリが島での毒について聞いてきた。
「あれはスキルによる物なんですよね。どんなスキルが発動したんですか?」
アマカはフォークをくわえながら、小首を傾け、キョトンとしている。
どうやら意味が分かっていないらしい。
「なぁ、アマカ。自分のスキルって判るか?」
シュウは、「実はアマカは、自分のスキルを知らないのでは?」と気にしていた。
アマカは、ずっと人目を避ける生活をしてきた。そのため、スキルを知る為の儀式を受けていない可能性があった。
「スキルってなーに?」
「「そこからかー」」
全員が思いを一致させた瞬間だった。
翌朝、シュウ、アマカは教会に向かって、歩いていた。
昨日の報告会の続きを始める前に、先に調べる事にしたためだ。
スキルを知るための儀式、シュウの故郷では、月に1度しか行われていないが、この都市では、お金さえ払えば、何時でも調べる事ができた。これは、故郷が貧しかった為ではなく、司祭のスキルレベルとそれの出来る人数の違いのためだ。
スキルを判定する儀式は、その宗教宗派に関係なく、どの教会でも受ける事ができた。これは、この世界の教会の門戸が広い訳ではなく、必要に迫られた結果だ。
シュウの故郷には、儀式の行える司祭がいたが、いない村の方が多い。また、魔法や戦う術を持つ者が多いこの世界でも、安全に旅をする事は難しい。その為、時期をずらす者が多いのだった。
教会の門に近づくと、門の近くで掃除をしていたシスターがコチラに気が付いた。
「おはようございます」
ニッコリとしているのだろうが、全く表情の読めないシスターが挨拶をしてくれた。声だけは優しい口調だった。このシスターを悪く言っている訳ではなく、トカゲの獣人、リザードマンのシスターなのだ。
その為、慣れていない者には、表情が解りにくい。
「おはようございます。今日は、この子に儀式をお願いしたいのですが、出来ますでしょうか?」
この自由海洋都市アニアムは、交易の都市の為、人口が多い。その結果、多くの宗教宗派の教会が何箇所もあった。今回来たココは、半漁人やリザードマンといった鱗を持つ者達が多く信仰している宗教の教会だ。
多種族の暮らすこの都市でも、宗教が絡むと少々メンドクサイ。なので、余計な問題を起こさない為にも、ココにしたのだ。
アマカはラミア族。下半身は鱗のある蛇だ。なので鱗繋がりという安直な選択で選んだ。
「勿論ですよ。さぁ、コチラへ」
案内され教会に入る。
教会の中は大小様々な緑色の丸い石が、床に壁に張り巡らせられている。鱗をイメージしているらしい。
準備をするので待ってほしいとの事なので、教会の中を見学させてもらった。入口のシスターが続けて案内してくれるようだ。
見回すと、所々に絵画が掛けられていた。湿地帯を闊歩するリザードマン、海中を泳ぐ人魚や岩場で佇む半漁人などが描かれていた。それらは聖人指定された人達とのことだ。
色々と説明してくれるが、ちょいちょい入信の勧誘が入る。正直うっとうしいが、まぁ、仕方がないので、スルーする。
しばらくすると、長いヒゲを蓄えたナマズ?顔の半漁人が現れた。どうやら彼が行ってくれるらしい。
ナマズの司祭は、祭壇に立ち、アマカは指定された位置にで待機する。そしてシュウは、邪魔にならないよう保護者席で見守る。
「それではアマカよ。前に」
「はい」
名を呼ばれると、司祭の前に用意された台座の上で中腰になる。足があれば膝を付けるが無いのでこの状態だ。
司祭は近くのシスターから白い石版を受けとると、アマカに渡した。
そして、詠唱が始まり、光が降りてくる。
シュウはその光景を見ながら、8年前を思い出していた。それと同時に無事に終ることを切に願っていた。
ユックリと光は収束していく。
無事に成功したようだ。
司祭はアマカから石版を受けとると読み上げた。
「薬物生成 レベル4、身体変化 レベル2」