帰還
「すっごーい、水だー、前も後も右も左も全部水ばかりー、すごーい、すごーーい!」
シュウと赤竜の爪のメンバー、そしてアマカは、自由海洋都市アニアムに向けて、帰路の航海の最中だった。
「随分と元気なラミアの嬢ちゃんだな。そんなに動き回って、落ちても知んねーぞー」
行きと同じく、帰りも外見はビーグル犬そっくりの犬の獣人コールドスが操舵して、予定通に迎えに来た。
相変わらずパイプを横にくわえた姿が凛々しい。
現在、アリオス、メリナス、ユーリナは爆睡中だ。
アリオスとユーリナは、ラミア族の酒を飲み過ぎた為だが、根本的な理由が全く違う。
アリオスは、船酔いを恐れ、寝続ける為。
ユーリナは、酒が美味しいく、単に飲み過ぎた為。
そして、メリナスは、帰りの間際までラミア族の子供達と遊び回り、体力の限界を迎えたようだ。
一方、チャーリは、ラミア族から貰った植物のサンプルをずっと見ている。
時折、ブツブツ独り言と、妙な笑い声が聞こえるが、気のせいだと思いたい。
シュウは、船の中心付近で進行方向を眺めながら、椅子に座って考え事をしていた。
「さて、どう報告しようかね」
アマカの事。
デーモンの事。
まぁ、正直に話すしか無いかっと思っていると、アニアムの港が見えてきた。
ブビーブビーー!
コールドスが帰港の合図を鳴らす。
アリオス達を起こし、下りる準備をしていると、堤防で大きく手を振っている男性が見えた。
目を覚ましたアリオスは、目を擦りながら堤防で手を振る人を見て・・・
「んー、まだ酔いが抜けてないのかな?あの振っている手が何本にも見える」
「安心しろ。正しく見えてるよ。手が6本ある。珍しいことにアシュラ族の人がいる。」
「あらぁ、何か叫んでいるかしらぁ」
「うにゃぅ?シュウの知り合いかニャ?名前を呼んでるニャ」
「えー?アシュラ族の知り合いなんて、いないぞ」
そこはかとなく悪い予感がする・・・
おや、よく見たらアシュラ族の人の後ろにアーベン教授がいる。
・・・何故か申し訳無いって感じの顔をしている。
船はゆっくりと港に入港し、桟橋の横に付けた。
到着した一行は下船すると、コールドスにお礼を言った。
親指を立て、眩しい笑顔を返す。
渋いねぇ、海の男だねぇ、と皆は称賛するが、顔がビーグル犬のため、カワイイという感想しか出ない・・・
なにはともあれ、先ずは報告に行こうとすると、桟橋の出口で先程のアシュラ族の男性が仁王立ちして、待ち構えていた。
両手を広げると
「やぁ、シュウ君。待っていたよ。さぁ、君の魔力糸を見せてくれ」
唖然とする一同
「所長、自己紹介を・・・」
「おお、そうだな、アーベン君。
コホン。
私がエンドラ王国 王立魔法研究所
三代目所長のアルシュエル・エドラーだ!」