村への帰還
シュウは、アマカから少し距離をとる。
地面に手を当て、見据えると、一気に地面を通して魔力糸を通す。
その形は細く放射状に伸び、アマカの足元まで進む。
すると、そこから垂直に、剣山の如く魔力糸が伸び、アマカを捕らえるのだった。
地面から伸びる無数の魔力糸は、アマカを串刺し状態にし、拘束した。
すると、シュウはすかさず魔力糸から一気に魔力を流し込んだ。
「ギャアーーーッ!!」
大きな悲鳴をあげるアマカ。
体内ではデーモンから流し込まれた物と、シュウの魔力がぶつかり合っていた。
魔素からほぼ無限に魔力を抽出できるシュウは、その物量を武器に一気にケリを着けに行った。
衝撃に耐え切れず、白目を向き、意識を失ったアマカの身体からは、徐々に黒いモヤが抜けて行き、元の姿に戻って行った。
完全に抜け切り完了するとシュウは、すかさず近づき、アマカの腹に手を当てた。
神の恩恵(クシャミの唾)の影響により、魔素を認識できるシュウは、魔素を認識できないこの世界の住人と違い、意識をもって魔素に干渉することができた。
通常、自身の身体から離れた位置にある魔素や、他の生体の中にある魔素には認識出来ても、干渉することはできない。
しかし、相手の体に直接触れることで干渉する事ができた。
そして、シュウはアマカの体内から魔素と魔力を抜いた。
その量は、魔法が発動出来なくなるまで・・・
魔力が無くなり、スキル由来の魔法の発動が止まった。
しばらくすると、森からユックリと毒の粒子が消えていくのが分かった。村人の体内にある毒もじきに消えていく事だろう。
その頃、海岸では赤竜の爪のメンバーと、パモス一家が待機していた。
「あのー、アリオスさん。大丈夫なのでしょうか?彼一人で行かせて」
「大丈夫ですよ。彼はこの中で1番強く、頼りになる男ですから」
すると突然、パモス一家の人々が不思議そうな様子を見せた。
「パモスさん、どうかしましたか?」
「あ、いや・・・、何だか」
「パパー、体から、なんかぬけてったー」
それを聞き、慌てて森の様子を確認するチャーリ。
「大変だよ、アリオス。森に漂っていた毒の粒子が消えていく」
「何っ!そうか、シュウの奴、やってくれたか」
安堵するアリオス達の横で、パモスは慌てて近寄ってきた。
「そ、それじゃ、私達は、村の皆は助かったのか?」
「そうですね。そうだと思います。確認しに行きましょう」
一行はラミア族の村に向かう事にした。