村での生活
「シュウちゃ〜ん」
自分を呼ぶ声に大荷物を抱えた状態で振り返ると、
女の子が名前を呼びながら、駆けって近づいてきた。
彼女はエリナ。世に言う幼なじみって奴だ。
「お手伝い終わりそう?」
屈託の無い眩しい笑顔で、彼女は今日も手伝いが終わりそうな見事なタイミングを見計らい、遊びの誘いにきた。
「コイツを親父のとこへ届けたら終わりだから、ちょっと待ってて」
彼女は私の状態を眺めながら、ポカーンとした表情をしている。まぁ、そんな顔をするのも無理もない。
今の自分は、身長の倍以上もある中身の詰まった200kgを超える大荷物を、持ち上げているから。小柄な子供がである。
「いつもスッゴイねー。まだスキル貰ってないのにー」
そう、この世界にはスキルがある。
異世界物のド定番のアレである。この世界の住人には、基本的に何らかのスキルを持っている。ただし、ソレが分かるのは10歳以降。
月に1度、教会で行われる儀式で、10歳になる子供は自分のスキルを知ることができる。因みに自分はまだ9歳である。
また、彼女が言っていた「貰う」は、正確には正しくないと考えている。
何故なら、人によっては日常で早くにその片鱗が現れるから。例えば自分の怪力は勿論のこと、エリナがタイミング良く現れるのも、スキルのおかげじゃないかと、疑っている。
そのため、スキルは生まれた時から決まっており、
生まれてから10年経つと、確認出来るようになるだけ。
と言うのが持論だ。
現状、自分はまだ子供であり、体格も小柄だ。
にも関わらず、重量が200kg超えの物でさえ、平気で持ち上げられる。その為、村全体で色々と手伝わされている。今日は家業の手伝いで、荷物運びだ。
住民が200人にも満たない小さな村では、子供でも十分な労働力。ましてや、大人顔負けの力持ちとなれば、使わない訳が無い。きっと、周りからは身体強化系のスキルを与えられていると思われている。
抱えていた荷物を目的の場所に置くと、親父が仕事仲間と話し込んでいた。
「東の街の商家が、行方不明らしい。何でもその家の娘がレベル3の火炎魔法スキルを与えられたらしく、北の山にいる魔法使いの所に弟子入りさせようと旅出たらしいんだけど、戻らないんだとよ。その魔法使いの所に到着してねぇって話だ。」
「おぅおぅ、そりゃ大変だ。北の山は結構おっかねぇからなぁ」
「お、ガキンチョどもが来たぜ。」
「ん?おぅ、ご苦労さん。嫁さんが迎えに来たなら、あがっていいぞ。」
「もぅ、おじ様ったら、もーぅ」
顔を赤らめながら、エリナは何時ものように勝手に盛り上がっている。
そんな彼女を見て、呆れながら、ふとスキルその物について考えていた。
多分、スキル自体の認識も、そもそもが間違っていると思う。