第三十三話 魂の記憶 1
「じゃあ、少し整理しておこうかしら」
「え、何を?」
「今後のアンタの事についてよ」
ビシッと指を差してエリーゼは続ける。
「アンタは今年から学校に通う事になるの、当然だけど魔法を習ったりもするわ、それと入学までもう一週間切ってるの」
「えぇっ、そうなの!」
「退院したばかりで体力だけじゃなく勉強の方も不安だけど、だからってずっと家に閉じこもってるわけにもいかないでしょ?」
「それは…確かに」
「それと、アンタ…魔法とかそっちの知識はあまりないでしょ?」
魔法という言葉や現象は知っている、が、知識となるとさっぱりだった。
前世の記憶とか知識が残っていればまた違うのだろうが、実際自分で使えるような魔法は一つもなく、おそらくは経験も知識もないのだろう。
「っても、アンタと同じくらいの歳で魔法がガンガン使える子なんて多分数えるくらいしかいないし、そういうものだからそこまで不安になりすぎなくてもいいわよ」
「う、うん」
とエリーゼは言ったが、これから苦労するのが目に見える気しかしないのは間違いない気がしてならない。
「…とまぁ、ここまでは建て前だったりするんだけど…」
「えっ?」
「この家系の事はラン様の日記で少し触れたでしょ?」
「う、うん」
この家の家系、それは『執行の魔女』と呼ばれている、簡単に言ってしまうと暗殺等を生業とする死刑執行者で闇の魔女とも呼ばれている、とエリーゼは言う。
「あれ?確かお姉ちゃんは家業は継がないって言ってたんだよね?」
「そうね、でもそれは後継になれるアンタがいたからでもあるのよ」
後継者が必要な家系だという事は理解できたが、ここで一つの疑問が浮かぶ。
現当主は誰なのかということだ、普通に考えれば両親のどちらかになるのだろうが、レンはまだどちらにも会ったことがないし顔も見ていなかった。
「アンタの父親は行方不明、母親は私がラン様と契約して十二年一緒だったけど、その間一度も姿は見てないわね」
「…それってもしかして」
「あぁ、ばあやが言うには生きてはいるみたいよ、たまに独り言で親不孝者!って怒ってるけど」
「そうなんだ、そういえばまだおばあちゃんも見てないけど、怖いの?」
「そりゃあもう、人じゃないわねあれは」
エリーゼが言うにはあれは人じゃないとまで言う程怖いおばあちゃんらしいが、家業に関しては既に引退していてそれ以外の仕事で家を開ける事が多いという。
「さて、休憩も済んだことだし、入学に備えて軽くトレーニングでもしましょ」
「トレーニング?」
「さ、早くローブに着替えて、こっちよ」
そう言ってエリーゼはレンの手を引いてを部屋から連れ出すのだった。
ここから魂の記憶編です。
本格的なレンのこの世界での物語が始まります。




