第三十二話 魔女の系譜 15
レンがエリーゼと契約して最初の朝を迎える。
「ほら、朝よ起きて起きて!」
「うみゅぅ…」
エリーゼがレンの肩をゆすって起こそうとしていた。
昨日は大赤蜘蛛、一昨日は銀髪鬼とこの二日間はとてもハードな出来事が続いたせいもあり、特に昨日は体を限界以上に酷使したせいか疲労が抜けきれないせいもあってなかなかベッドから起きられないでいる。
「うーん、結構なお寝坊さんなのかしら…あのバカは朝早くからどっか行っちゃうしホント無責任で使えないダメ猫ね」
使えないダメ猫はおそらくブラッキーの事を言っているのだろう、『レン』の件があるせいでエリーゼはあまり好意的には思っていないようだった。
寝ぼけなまこのままレンはエリーゼにベッドから起こされ、顔を洗うように言われて一緒に部屋の外に出て洗面所に向かった。
広い屋敷でろくに中は歩いてなかったせいもあり、途中でエリーゼに屋敷の中を色々と案内してもらう。
顔を洗い終えて部屋に戻ろうと洗面所を出た所で使用人と鉢合わせした、その手には洗濯物が入ったカゴが見えた。
(えっと、確かこの人の名前、理恵さんだっけ)
昨日見た、レンの姉のランの記憶の事を思い出す。
「おはようございます、レン様」
「おはよう、理恵さん」
と、お互いに深々と頭を下げた、が、レンからしたら彼女の事は名前しか分からないようなものなので、何を話していいのか分からずなんとなく気まずい。
「あ、昨日のカレーすごく美味しかったよ、食器、すぐ台所持ってくね」
「でしたら今すぐ朝食の用意をして持っていきますので、部屋でお待ちください、その時に一緒に持っていきますので」
少しだけ笑みを浮かべた理恵を横目に、レンとエリーゼは自分の部屋に向かう。
「あの理恵さんは、この家のメイドさんなんだよね?」
「そうね、専属のハウスキーパーよ」
「なんだろう、なんかちょっと雰囲気が苦手っていうか…」
「そうなの?でも仕事に関しては相当のものだと思うわ、特に料理は色々と工夫して作ってくれるし、ラン様も口うるさいばあやにも評判いいのよ」
それに関しては同意だとレンは頷く、子供が苦手な野菜とかも工夫してうまく食べさせようとしていたし料理のレパートリーなんかも多そうな感じだ。
そんなこんなと部屋で話をしていると、理恵が朝食にスープカレーとフルーツがいくつも入ったヨーグルトを持ってきてくれたのでそれを食べながら話を続ける。
「もしかして、エリーゼの事は理恵さんから見えてるの?」
「ラン様が言うには私の存在は感じるぽいって言ってたわね、まぁその本人から声をかけられたことはないんだけどね」
「そうなんだ」
「うん、そんな訳だから、家の中にいる時は私とは普通に会話しても大丈夫よ、あ、あの猫とはやめたほうがいいかもしれないけど」
「どうして?」
「あれは、ちゃんとした精霊の類じゃないから…ね」
エリーゼは少し濁すようにしてそう言い、そんなこんなでゆっくりとした朝の時間が過ぎていくのだった。
魔女の系譜編はここで終わりになります。
次回は8日に3話アップの予定です。




