第三十一話 魔女の系譜 14
「そろそろ時間みたいね」
そう言うとエリーゼの身体が徐々に透明になっていく、彼女の魔力が尽きかかっているのがレンにも理解できた。
「もしかして、死んじゃうの?」
「死ぬわけではないわ、精霊界に帰るの、それにもうこの世界に留まれるだけの魔力がもう残ってないのよ、主を失ったから魔力も供給されないし、その手帳に閉じこもってたのはラン様の遺言を伝える為だからね」
このまま彼女を行かせていいものだろうか、いや、いいはずがない、そう思ったレンはすかさずこう言った。
「じゃあ、私と契約してくれる?」
「はぁ?」
「ハァ?」
ブラッキーとエリーゼの驚いたような声が被る、いやなんでそこで被るの…と思いつつレンは続ける。
「エリーゼちゃんの助けが必要なの、私、こっちに来たばかりだから何も分からないし…ダメだったらお友達からでもいいから!」
両手を合わせてレンはお願いをする、その様子に困惑気味のエリーゼ。
「やめとけって、その羽虫多分噛むぞ」
「ちょ、羽虫って何よ!てか噛まないわよ!」
ブラッキーに調子を狂わされるエリーゼだったが、少し考え込んだ後レンの肩に止まり、
「じゃあ、ほんの少しだけ助けてあげるわ、どうせこのまま帰った所で他の仲間に笑われて癪なだけだし」
そう言ってレンの頬に軽く唇を触れる、と同時にレンの魔力が彼女に流れ込み、エリーゼの魂と繋がるような感覚を感じた。
「契約、完了したわよ」
「これが、契約?」
エリーゼの透明がかっていた身体が普通に見えるようになり、指で触れると髪の質感から体温まで感じられる。
「なんかすごぉい!」
と少し興奮気味になっていると、突如ノイズが走るような音がした。
(ふぅん、この薄汚い化け猫が連れてきたからどろっどろに汚れきった犯罪者の魂でも持ってきたのかと思ったけど、案外普通なのね)
(記憶を失ってるからな、もしかしたら羽虫のお前が言う通りのでろっでろに汚いヤ…ギニャッ!)
念話でそう言い終わる前にエリーゼの高速キックがブラッキーの顎に炸裂し、そのまま数メートル吹っ飛ばされていた。
「あー、今二人でなんか内緒話してたでしょ?」
「へぇ、案外鋭いのね」
レンの問いに対してエリーゼが少し驚いたように言う。
「この羽虫、ハエより早いんじゃないか…」
仰向けになったブラッキーがそう呟く中、レンは姉の忘れ形見でもある精霊エリーゼと契約したのだった。




