第二十九話 魔女の系譜 12
いつものように妹の病室に足を運ぶ、扉を開け中に入ると、ベッドで眠っているレンの姿があった。
「あ、お姉ちゃん」
「あら、起こしちゃったわね」
「ううん、平気!ねぇ、今日も遊んでくれるの?」
「ごめんなさい、今日は顔見に来ただけなの、ほらお姉ちゃん前にも言ったけど成人の儀があって準備に忙しいのよ」
「じゃあ、今度はいつ来てくれるの?」
「来週にはまた来るわ、それまでいい子にしてるのよ」
「はーい」
「ほら、もうおやすみ」
そう言ってランはアロマキャンドルに火を点けると、眠りを誘う芳香が部屋中に広がり、レンはすぐに眠ってしまった。
陽はもう落ちかけ、東の空からは夜の闇が迫ってくる。
(お姉ちゃん、頑張るからね)
そう心の中で呟いてランは病室を後にし、屋上へと向かう。
屋上には相棒のエリーゼが周囲を伺っていた。
「あ、ラン様、ちょうどよかった!」
「エリーゼ、何かあった?」
「あちらから魔力の歪みを感じるわ」
エリーゼが指を指した方向の空間が割れ、そこからゆっくりと銀色の髪をした鬼が姿を現す。
(想定より来るのがずっと早い、干渉値の影響なの?)
銀色の髪の鬼がランの姿を見つけると、そちらに歩みよりその距離が少しずつ縮まっていく。
「エリーゼ、お願い!」
エリーゼが魔法の詠唱に入ると同時に手にした短剣で銀髪鬼に斬りかかる、その直前でエリーゼの魔法が発動する。
「風精の加護!」
持っていた短剣に風のオーラを纏い放たれた一閃は銀髪鬼の左腕を捉えたように見えた、が手応えが伝わってこない。
その直後、銀髪鬼は攻撃後の隙を狙って刀でランをなぎ払う、すぐに回避行動を取るが避けきれず背中に深い傷を負ってしまう、と同時にエリーゼの姿まで消える。
「クッ、魔力が奪われている」
タチの悪い事に、銀髪鬼の持っていた刀には呪いが込められ切りつけた相手の魔力を奪う力があった、ランの守護をするエリーゼが魔力を奪われ消滅してしまい、身動きが取れずにいる所に銀髪鬼は刀を鞘に収めたあと一気に刀を抜き放つ。
容赦なく放たれる慈悲のない斬撃の一閃はランの左腹を捉えた、と同時に銀髪鬼が悲鳴をあげ口から血を吹き出す。
(鮮血の魔呪)
自分がダメージを受けると、そのダメージがそのまま相手にも入るという呪いの魔法。
ランは交戦に入る直前にこの魔法を銀髪鬼に仕込んでいたのだったが、致命的なダメージを受けないとこの魔法の効果はない。
(せめて、道連れくらいにできればよかったんだけど)
再び空間が割れ銀髪鬼は割れた空間に飲み込まれていく、とりあえずの危機は去ったが、左腹部から流れる血の量が多く、助かる可能性はなかった。
「これ!しっかりおし!」
おばあさまの声が聞こえた気がした、けどもう目は見えない。
「お、ばあさま…あとのこ…おねが…」
声にならないような最後の声でそう言い、ランは息を引き取った。
レンのお姉さんのお話はこの話で終わりです、次からはレンのお話に戻ります。
次は6月1日に3話アップの予定です。




