第十九話 魔女の系譜 2
広い廊下を歩いていると左に玄関が見える、正面からの入口なのだろう。
さらに真っ直ぐ進んで一番奥の右にドアが見える。
「覚えているとは思いますが、お嬢様の部屋はこちらになります」
そういって彼女は部屋に案内をしてくれた。
昼食を持ってきてくれるとのことなのでとりあえずベッドの上にあった寝衣に着替えて自分の部屋の中の家探しをすることにした。
部屋には勉強用の大きな机、鏡台、ベッド、クローゼットからピアノまで置いてある。
まずは家探し定番のクローゼットを開けてみるが、中には黒いローブが一着かかっており、それ以外の服は入っていない。
試しに寝衣の上から羽織ってみると、サイズは申し分なくいかにも魔女になったような気分になる。
次に机の引き出しを開けると、そこには小さな鍵と鍵穴のある黒い手帳が入っていた。
「待て、それを開くな!」
鍵穴に鍵を差して手帳を開こうとした手がその一声で止まる。
「その手帳から微量の魔力が漏れているのを感じるぞ…これは多分何らかの魔法が発動する罠の類だ」
「罠?それってどういう意味?」
「もう分かってるだろうが、ここは魔法の世界、そしてその服があるって事はお前はおそらくどこかの魔女の子なんだろう」
「えっと、それってつまり?」
「これは俺の感だが、お前は今誰かに試されてるんだろう、理由は俺には分からんがな」
試されている?誰が?何のために?
そんなことを考えているとコンコンっとドアを叩く音が聞こえた。
「お嬢様、昼食をお持ちいたしました、熱いので気をつけて召し上がってください」
湯気が出ているお椀の蓋を開けると、そこには橙色をしたお粥が入っている。
(あれ、わざとだよな)
黒猫がニヤニヤと笑みを浮かべて部屋を出て行く使用人の方を見ている。
おそらくこれも何かの意図があるということなのだろう。
お粥の中にはニラとネギがちらされ、真ん中に生卵が落としてあり、鶏がらのスープをメインにしただしの味がして、『レン』が嫌いな人参の感じや味自体はあまりしない。
「おい、いいのか?嫌いなはずのものなんだろ?」
『レン』が嫌いなものではあるが、単に味が嫌いなだけであって、その嫌いな味がしないのなら何か言われても大丈夫だろうとレンは判断しお粥を全て平らげる。
すると、お椀の底に見たことのない何かしらの文字が浮かび上がる。
「クロちゃん、これ何て書いてあるか読める?」
「俺様はクロちゃんとなどというヘンテコな名前ではない!」
じゃあ何と呼べばいいのか、もしくは名前を教えてくれと尋ねると、黒猫は少し考え込んで、
「俺様の事はブラッキー様と呼べ」
「じゃあ、今からブラッキーちゃんって呼ぶね」
「ちゃんづけはヤメロ!」
明らかに黒→ブラック→ブラッキーから来たとしたら結局黒ちゃんじゃないかと突っ込みたくなるのを抑えつつ、レンは了承したのだった。
ストーリーパートです。
黒猫の名付をする回です。




