第十七話 契約 7
(倒した?)
(とりあえずはな)
銀髪鬼の気配が完全に消え、周囲の様子が変わる。
穴の空いた床や崩れた壁、散乱していたガラスの破片などは消え、全てが元通りに戻っていた。
(さっきの魔法は?)
(あれは儀式魔法ってやつだ、説明すると長くなるんだが…)
銀髪鬼が完全に消滅した所を見ると、普通の魔法でないことはすぐに少女は理解出来た。
黒猫の特別な力だったのは間違いない。
(儀式魔法はその名の通り儀式を行う魔法だ、分かりやすい例で言うなら召喚儀式なんかと同じ部類になる)
(じゃあ、さっきのは何かを召喚した魔法だったの?)
悪魔を思わせる三本の手が銀髪鬼を貫いたことから、遠まわしに悪魔を呼んだのかと黒猫に聞いてみる。
(召喚に近いと言えば近いが、儀式魔法というのは特定の条件下でだけ使えるもんだ)
(特定の条件?)
(贄がいる、召喚もそうだが、儀式を行うには対価になるもんが絶対に必要なのさ)
生贄がいるということなんだろうか?だがあの場面で生贄になったようなものはないように感じた。
(ん?贄ならいたじゃないか?腹に穴あけて悲鳴あげてた奴がお前の目の前にな!)
それは、銀髪鬼の事を指していた、生贄に捧げたのは銀髪鬼だったとして、何者かに生贄にされてしまったとしたら、確かにこの世界からは完全に消滅するしかないのだろう。
(ヒントは霧の国だ、それ以上はもう言わないぞ?)
霧の国…おそらくこの黒猫もそこからやってきたのか、もしくは何かしらの関係があるのは見て取れたがそれ以上答えてはくれなかった。
そんな事を考えていると、深淵の衣装の効果が切れたらしく、私の存在に気づいた女の子がうっすらと目を開けて
「レンちゃん、無事で…よかった」
そう言ってまた目を閉じてしまった、どうやら眠ってしまったらしい。
「こんな忌々しい魔女の子の手助けなんか借りる事になるとはな…今日はそれに免じて見逃してやる」
人魚の姿をした精霊はそう言って巻物を手に取り出すと、光に包まれて女の子と一緒に姿を消してしまった。
(行っちゃった)
(向こうはお前の事知ってた風みたいだが、知り合いか?)
(知らない)
だが、女の子は私の事を『レンちゃん』と言い残した、『レン』おそらくこれがこの世界の少女である私の名前なのだろう。
(知り合いならどうせすぐ会えるかもな、今回は見逃してやるとかあいつ言ってたし)
人魚の精霊は敵意を持っているように見えた、そして私の事を魔女の子とも言っていた所から、敵対関係なのかそれとも…
(とりあえずもう寝とけ、お前もあのニンゲンに魔力をあげたから結構しんどいだろう?)
急に色々あったのと疲労のせいか考えがまとまらず目を閉じると、レンの意識は深く沈んでいった。
長かった夜が終わりを告げるその時まで。
契約編はこれで終わりになります。
黒猫の正体は気づいた方もいるかもしれませんね。
儀式魔法は条件を満たさないと使えないという欠点と、黒猫自身が戦闘行為は得意ではないので切り札的な物になります。
次回は5月入ってすぐくらいで更新予定です。




