第13話 会議②
封土についての会議が一段落をしたのだ。
街を作って、おっさんを支える貴族達が人員を出していこうとそういう話なのだ。
フェステル伯爵が中心となって人員配置は決めていくようである。
ゼルメア侯爵、フェステル伯爵、ガリヒル男爵、ウガル元伯爵は会議室から出ていくようだ。
そして、それぞれに仕える騎士達も出ていくようである。
人数がずいぶん減った広い会議室である。
そして、休憩がてらに待つおっさんである。
そしてやってくるのだ。
パメラとソドンである。
王城に仕える騎士に呼んでもらったのだ。
「待たせたであるな」
「いえいえ、お2人が主役ですから」
「それで、武術大会をどうするかって話であるか?」
「そうです。私としては、パメラとロキが武術大会に出ていただけたらと思います」
既に2通目の招待状は王城にガルシオ獣王国セルネイ宰相から届いているのだ。
「ふむ、まあ悪くない方法と某も思うである。ただ、獣王は予選や、本選の初めの方は見ないであるぞ。主に決勝戦のみであるな」
堂々と獣王国に入れる上に獣王も観覧するのだ。
「なるほど、優勝者を呼んで何か褒美のようなものを渡す授与式はないのですか?」
(優勝トロフィーの授与的なの。金メダル的なのでもいいけど)
「褒美はないであるな。手にするのは、獣王武術大会の優勝という名誉のみである。優勝者は獣王が獣王観覧室まで呼んで、優勝を称えるであるな」
「優勝すれば、かなり獣王に近づけるということですね」
「うむ」
ソドンとしてもベストの方法であると思うのだ。
優勝さえすれば、獣王に限りなく近づけるのだ。
ガルシオ獣王国への王都にも問題なく入ることができるのである。
獣王国が誘ってきたのだ。
ダンジョンを攻略した英雄と思ってくれているのである。
その中に王女が紛れ込んでいるなどつゆにも思えないはずだ。
「し、しかし、優勝など簡単にできるのでしょうか」
マデロス宰相がたまらず声を出す。
国王からパメラとソドンの素性について聞いたようだ。
王国の未来にも左右するので、残って参加したのだ。
というよりも他の貴族をマデロス宰相が退室させたのだ。
隣国の王族ということもあり、言葉使いは丁寧である。
「そういえば、ヴェルム親衛隊長が言ってましたが、また断るのかって、以前も断ったのですか?」
「う、うむ。頻繁に招待が来るのだ」
マデロス宰相が苦い顔をしながら、事情を説明してくれる。
ガルシオ獣王国はとても武芸を大切にする国である。
そして、今回誘われた大会は、獣王の名前を唯一ついた武術大会である。
その名のとおり、獣王武術大会には国家の威信がかかっているのとのことだ。
「武に対する思いの強い国なんですね」
(何かイメージ通りね。今のところ何の疑問もなく耳に入ってくるよ)
「うむ、帝国と毎年のように戦争をしているからであろうな」
さらに、国が武に傾倒する理由も教えてくれる。
ウェミナ大連山は、北は聖教国の途中から、南はヴィルスセン王国まで続いているのだ。
大連山の切れ目から王国に来ることもあるが、途中大連山や大森林にはAランクやBランクのモンスターがいる。
モンスターの討伐も念頭に置いた、準備をしなくてはいけないので帝国としても大変な負担が発生する。
それは、軍の数も兵糧についても十分な量でなくてはいけないのである。
当然戦闘しながら進むため、行軍には時間も要し、行軍が発見されれば守りを固められる可能性も高いのである。
当然、王国側の援軍が到着する時間も稼ぎやすくなるのだ。
帝国がオーガを使ってフェステル領を荒廃させてからの行軍しようとしたのも、こういったわけがあるのだ。
しかし、大連山は獣王国まで伸びていない。
帝国と獣王国の国境は見晴らしの良い荒野であるとのことである。
その荒野で毎年のように万単位同士での戦争をしているのだ。
常に戦争状態の獣王国は武に長けた英雄を募るのだ。
武術大会を獣王国の力を示す、国家発揚であるのだ。
「だからウガルダンジョンを攻略した私達を闘技場に招待したと。そんな王国の英雄を倒せば、国威発揚に繋がると」
「おそらく、そのとおりだ。しかしだ」
「しかし?」
「さっきもいったとおり、招待されるのだが、獣王国全土から猛者が集まってくるのだ」
招待状がくるので、王国としても、優勝の可能性のある、腕のあるものを送るそうだ。
今まで優勝者が王国から出ていないがそれだけならまだいい。
中には大会で手痛い攻撃を受け、その後戦えないものを出てきているとのことである。
そんなことが続くので、王国としても、王国で武芸に秀でた者を失うわけにはいかないので、あれこれ理由をつけて断っているとのことなのだ。
(たぶん、国家の威信がかかっている分、大会に対する温度差が違うんだろうな。この感じだと、王家としても俺らが参加しても優勝の可能性はそんなにないと思っているのかな)
「そういうことだったのですね。まあ、武術大会まで3カ月とのことですので、訓練を積み重ねて優勝の可能性を少しでも上げるしかないですね」
「いや、王国の王都から獣王国の王都から1か月はかかるのだ。そんなに時間はないぞ?」
(なるほど、1000kmほど離れているのね)
「いえいえ、獣王国には召喚獣で飛んでいきます。恐らく2日もあれば着くはずです」
(がんばれば1日で着くと思う。がんばるのは召喚士と召喚獣だけど)
「「「な!」」」
マデロス宰相もパメラもソドンも驚くのだ。
最近王城にこもっていたため、召喚獣による飛行実験の話を聞いていないのだ。
「ただ、今回の招待は正式なものです。国境で通過した記録も何もないと、何かあったときに問題になるかもしれませんね。1か月半後に馬車を王都から走らせて、獣王国の王都近くで合流しましょうか」
(余裕も持って行ってもらって、合流する場所決めておくかな)
各種関所に、王国が通過した記録がないと問題になるかもしれないと思ったおっさんである。
馬車に乗って移動した形にしようというおっさんである。
「ま、まあ、獣王国とは仲良くするというのが王国の在り方であるからな。問題は起さないでくれよ」
(王国って結構、獣王国と友好的だよな。まあ、良いことだが、なんか深い理由でもあんのかね)
「大丈夫です」
おっさんの言葉が全然大丈夫に聞こえないマデロス宰相である。
「ソドン。そういえば、向うの親衛隊長とお知り合いなのですか?」
(社交界で、ソドンこそこそしてたけど)
「う、うむ。昔からの付き合いだな。あやつは、現王に仕える獣王親衛隊であるからな。今回は宰相の護衛のために来ていたのであろう」
「そうなんですね。でも武術大会に優勝した親衛隊長が、獣王を置いて護衛に来るなんて不用心ですね」
「まあ、現獣王もこの武術大会の優勝者であるからな。心配ないと判断したのであろうな」
(王様も大会に参加する国なのね)
なんとなく、獣王国の姿が分かったおっさんであったのだ。
その後の話し合いで、ロキだけでなく、パメラもしゃべる鎧の訓練を受けることになったのだ。
しゃべる鎧が快諾したのだ。
ダンジョンに取り込まれていたころは意識がほとんどなかったため、気にならなかった。
今はセリムの中で結構暇であるとのことだ。
会話にもたまに参加するしゃべる鎧である。
セリムは魔力を増やすと、召喚獣を多く召喚できるようになる。
そのため、宮廷魔術師の訓練に午前中の基礎訓練だけでも参加できるようにマデロス宰相にお願いしたのだ。
参加すれば魔力が上がるかもしれないという淡い期待からである。
午後はロキとパメラのためにしゃべる鎧の召喚である。
また、おっさんが持つMPが自動回復する外套と同じ効果のある防具や武器を探すとのことである。
お揃いな、同じ外套は着ないのだ。
おっさんは、両親が現実世界に戻るので、明日は両親の相手をするとのことだ。
「ケイタ殿はどうするのだ?」
「えっと、イリーナの街作りですかね」
(ガルシオ獣王国にもいくしな。ASポイントは貯めれるだけ貯めておくかな。ブログネタにもなるだろ。1つの街を1からつくるんだからな)
「ぶっ」
イリーナが吹きだすのだ。
どうやらおっさんの中で街の名前が決まっているらしい。
そして翌日のお昼前。
ゼルメア侯爵の一室である。
おっさんとイリーナ。
そして、おっさんの両親の4人である。
お見送りをするのだ。
おっさんのタブレットがそろそろ、異世界招待券の6日間の期限が到達することを教えてくれる。
「孫が出来たら、見せてくれよ」
おっさんの父が唐突にいう。
「そうだね。その時はまた呼ぶよ。あと3分かな」
「イリーナさんも息子をよろしくお願いします」
おっさんの母も頭を下げる。
「はい、お義母様。私もそちらに、いつか伺います」
料理の準備をしないとねというおっさんの母である。
時間が間もなくすぎるところで、おっさんが思い出す。
おっさんの父も母も体が悪いところがあるのだ。
(そういえば、異世界と現実世界の行き来で持病とかどうなるんだろう。まあ回復魔法かけておくか。ついでに治癒魔法もだな)
おっさんはとりあえず、両親に回復魔法Lv4と治癒魔法Lv4をかけておくことにしたようだ。
驚きながら魔法を受けるおっさんの両親である。
「あと1分もないよ」
正確に時刻を記録していないので、あいまいにいうおっさんである。
時間になったようだ。
目の前の風景が、現実世界に変わる3人である。
「え?俺もか?」
「「な!」」
そこは1k8畳のおっさんの賃貸マンションである。
おっさんとおっさんの両親が現実世界に戻ったのだ。
(まあ、確かに異世界に行くときも3人で行ったしな。おれだけ、扉アイコンから異世界に行ってないと。あくまでも招待ということか。招待したんだから一緒に行くし、お見送りもすると。多分これはブログネタを投稿しなくても、異世界に行けるし、現実世界に戻れるんじゃないかな)
おっさんの中で異世界招待券のルールについて考察が進んでいくようだ。
その後、街で買い物をして帰るということなので、街まで両親を送って解散をしたのであった。