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おっさんが始める異世界雑記ブログ  作者: ハム男
第3章 ガルシオ獣王国武術大会編
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第01話 王宮料理

 おっさん達は馬車で王城に到着する。

 おっさんは漆黒の外套であるが、皆おめかししまくった格好である。


「でも、ずいぶん早くにいくのですね」


「まあ、謁見ほどではないが、応接室で待つのであろうな」


 皆にダンジョン攻略の報酬を配ったその足で王城に向かうのである。

 馬車の外を見ながらいう、おっさんの独り言を拾ってくれるイリーナである。

 まだ15時過ぎであり、おっさんはお腹空いていないのだ。


 王城に入ると、案内されるままに応接室に入るのだ。

 その際、白金貨とオリハルコンの武器は王城の受付の役人に渡すのだ。

 ちなみにこの間一切パメラは言葉を発していない。

 完全に心を閉ざした感のあるのだ。

 ソドンを見るおっさんである。

 ソドンからは首を振られるのであった。


(パメラは王国と何かあったのかな?まあ、話さないことは聞かない方針に徹するしかないな)


 タブレットを見ながら、時間を潰していると、準備が整ったということで、侍女らしき人に案内されるおっさん達である。

 おっさんを先頭について行くと、4階の一室に案内される。

 扉を開けると誰もいないようだ。


(ふむ、基本的に国王は後から来るのか)


 とりあえず、案内されるままに席に着くのである。

 横長に片側10人座れるくらいの長さの中央に座るおっさんである。

 待ちぼうけすること30分

 王城に到着してからだと3時間が経過する。


「待たせたであるな。少し新年の準備が忙しくての」


(新年?そうだよな。たしか、もうそろそろなんだっけ)


 70過ぎた国王が王妃を連れてやってくるのだ。

 王家との食事会であるが、マデロス宰相も連れてきている。

 あと王女であろうか20歳前後ドレスを着た女性がやってくる。

 長く流したカールしたピンクの髪と、ややたれ目のかわいい系の顔のだなと感想が出てくる。

 胸元が結構空いているが見ないようにするおっさんである。

 なぜかおっさんの正面に座る王女らしき女性だ。

 その横に座る国王である。

 当然護衛の近衛兵も食事はしないが10人ほど側近くで待機しているのだ。


(王宮のマナーなんてさっぱり分らんが、まあいまさらだな)


 国王から待たせたなと言われて何と答えたらいいか分からない現代人のおっさんは、とりあえず軽く会釈をするのだ。

 頭を下げておけば、万事うまくいくのだ。


「別に緊張する必要はないのだぞ」


とマデロス宰相にフォローされるおっさんである。


「ありがとうございます、こういった場面は慣れておりませんので、粗相があったら申し訳ありません」


 台車に乗った食事が運ばれてくるようだ。


【ブログネタ帳】

・王宮料理食べてみた


「!」


「イリーナ君、どうしたのだ?」


「いえ、なんでもありません」


 おっさんがタブレットを出現させたことに反応してびっくりする、おっさんのとなりのイリーナである。

イリーナの驚きに反応するマデロス宰相である。


 なお、おっさんはタブレットを普段タップしたりして操作しているが、戦闘中や、今みたいな同時に食事もしないといけないような状況で操作が難しい時は、画面を見るだけで操作をするのだ。

 頭で意識しただけでも各種機能を操作可能なのである。


「お酒は何を飲むのだ?」


「実はお酒は苦手で果実水か何か頂ければ」


 侍女がおっさんには果実水を目の前で注いでくれる。

 皆の席にはワインだろうか、濃い赤い飲み物を注いでいくのだ。


「食事の前に1つお礼を言わせてください」


「ん?どうしたのかね」


 国王が答える。


「ダンジョン攻略中、そして謁見の際、ウガル家の件で特別のご配慮をいただきありがとうございました」


 謁見の間でのやり取りについて、お礼を言うおっさんである。

 攻略中であるウガル家の問題を知っていたことになる。

 謁見のやり取りはウガル家の問題を知らないことになる。

 攻略中と謁見両方の礼を言うことは、国王の対応としては矛盾(茶番)になってしまうが、構わず礼を言うおっさんである。


「ふむ、ダンジョン攻略中はともかく、謁見の対応はウガル元伯爵が望んだことであるからな」


「そうでしたか」


「うむ」


 それだけで全てを察するおっさんである。

 ウガル元伯爵なりのけじめだったのだろう。

 きっとセリムが止めなければ本当に処刑になるくらいの覚悟があったと思うおっさんである。


よく分からないスープがおっさんの前に置かれる。

国王もスプーンを使って飲みだすようだ。


(国王の料理をだれかが毒見とかしないんだな。異世界は現実世界と違って飲めば完治する治療薬とかあるから何かあれば薬を飲んで解決なのかな)


 スープを口にするおっさんである。

 毒見もせずに出てくるスープはとても暖かいのだ。

 出汁は利いていないようだ。

 香辛料で味を調えている。


「では、余からも礼を言わせてくれ。さすがに食事を誘っただけであれは貰いすぎではないのか?」


 白金貨5000枚とオリハルコンの剣と盾のお礼である。


「いえいえ、もろもろのお礼が入っていますので」


 ウガルの件や、結婚式の主催、ロキの対応などを口にするおっさんである。


「なるほど、そうであったか」


「実はもう1つ渡したいものがありまして、ここに持ってきているのです。あとで御覧になっていただけたらと思いまして」


「ん?そうなのか?今貰うぞ?」


(今渡してもいいのか)


「ありがとうございます。では、セリム」


「え?あ、はい」


 セリムが膝の上に置いておいた羊皮紙の本を両手で持つ。

 どう渡したらよいか分からぬようだ。

 目の前に座るマデロス宰相が手を差し出すので、両手で渡すようだ。


「本か?これは?」


 まさか本を渡されると思っておらず驚くマデロス宰相である。

 中をめくるマデロス宰相である。


「物語です。生まれてからダンジョン攻略をするまでの」


 おっさんのその言葉に王家の皆が本に視線が集中する。

 ガンガン読み始めるマデロス宰相である。


「先に読むでないわ。余に渡すのだ」


 マデロス宰相から国王に渡される。

 この場で読むようだ。

 王女も気になるのか、覗き込むようにするのである。

 皆本をめくる国王に集中するのだ。

 10歳の子供向けの物語なので5分かそこらで読み切るのだ。

 読み終わった後目をつぶり考えこむ国王である。


「わ、私にも読ませてください」


(声優系の声だな)


 王女が初めて声を出す。

 声優系の高めのかわいい声のようだ。

 王女に本を渡す国王である。

 まだ考え込んでいるようだ。

 前菜のサラダも口にしないので、侍女は待機中である。

 王女も読み終わるようだ。


「で、どうであった」


「素晴らしいです! 召喚獣って素晴らしいのですね!!」


 王女は感激してくれたようだ。

 セリムはほっと胸をなでおろしている。

 しかし、国王はその答えで眉をひそめるのだ。

 国王が皆食事を続けるよう促すので、前菜のサラダを口にする。


「マデロス宰相にも読ませてやるのだ」


(そういえば、異世界では新鮮な野菜があまりないな。根菜類のスープはイリーナが良く出してくれるけど、葉のものは少ないな。日持ちしないからだろうけど)


と思いながらモリモリ食べるおっさんである。

 タブレットのブログネタ帳にガンガン記録されていくのだ。

 マデロス宰相も読み終わるころにパスタのようなものとカットされたパンが目の前に置かれる。


「なるほど、これを読むことで、新たな召喚士が王国に出てきそうですね」


 マデロス宰相が王女とは別の感想を漏らす。

 しかし、国王は満足のいく答えではなかったようだ。


「セリムよ、なぜこれを書こうと思ったのだ?」


「ケイ、ヤマダだん、ヤマダ子爵が書いた方がいいと言ったからです」


 それを聞いてさらに深く考え込む国王である。


「国王陛下、いかがされたのですか?」


「ふむ、マデロス宰相よ。お主がもし誰も知らない、誰も持っていない新たな力を手にしたら物語を書こうと思うか? これはな、この本も確かに素晴らしい。しかしな、魔導士ケイタはな、今この場で本を渡すことも、その後この本がどう扱われるかも予見しておったのだぞ」


「な!? そ、それは」


 どうやらマデロス宰相はこの本の意味が分かってきたようだ。


「この10歳かそこらの子供が読みやすい本だ。内容も、実話をもとにしているからな。ダンジョン攻略の事実と共に、広く読まれていくことになるであろうな」


 王妃が国王を心配するので、食事を取りながら話をすすめる国王である。


「魔導士ケイタよ。広く王国に広めてほしいとそういうことであるな」


「はい」


「これを読んで召喚士はどの程度王国に増えると思っているのかね?」


 王国の未来が気にかかる国王である。


「完全な予想になります」


「もちろんかまわぬ、魔導士ケイタの、ふむ」


「いかがされましたか?」


「いや、余もケイタと呼ばせてもらってもよいか?」


 ケイタと呼びたかったようだ。


「もちろん構わないです」


「それで、ケイタよ、王国はどうなると思うのだ?」


「召喚士は1000人に1人に才能があるかと考えています。しかし、この物語のように魔法書で強制的に才能を目覚めさせ召喚士にしたセリムと違って、2人目の召喚士は数年から、もしかして10年以上でてこない可能性があります」


「ふむ」


「その後、魔法書を使わなくても良い召喚士の育成方法が確立されて、3人目、4人目と召喚士が増えていくと考えています。将来的には1つの街に1人か2人はいるような状況がいいですね。その状況なら王都だともっといそうです」


「なるほど、そうか。分かった、では早く広めたほうがいいの。王家が預かり各領に広めておこう」


「ありがとうございます」


 王家で物語を預かる事になった。

 冒険者ギルドにも渡すことも伝えたが、その時やや表情が曇ったので、王国だけで広めたかったようである。

 しかし、反対はしないようだ。

 広めれば、どうせ遅かれ早かれ他国にも流れる情報と、反対しておっさんの心が王国から離れることを天秤にかけた国王である。


 パスタとパンを食べたあと、よく分からない肉料理が出てくる。

 中々の量だ。

 肉好き女子のイリーナがモリモリ食べる。


(肉料理もソースは柑橘系だな。異世界に着て牛乳飲んだことないな。乳製品はやっぱりないのかな。まあ現実世界でも牛乳なんて飲まないけど)


「それで、ロキよ」


「は、はい」


 物語の話が人段落着いたので、ロキに声をかける国王である。

 ロキには呼び捨てをする許可は取らないようだ。


「ケイタの結婚式までは、王都にいるのであろう。近衛騎士団の訓練にぜひ参加してもらえないだろうか?」


「は! 喜んで」


「お主の配下の騎士も参加してもらえないだろうか?」


 ロキの配下の騎士である、アヒムらの力も知りたい国王である。


「は! 配下の騎士も栄えある近衛騎士団と訓練出来て、良い思い出になるかと思います」


(ふむ、コルネも騎士になったことだし、参加するか聞いておくかな)


『ほう、王国の騎士の訓練か。主殿も参加するのだ』


「ぶっ」


「む、どうしたのだ?セリム伯爵」


 しゃべる鎧の話声は他の召喚獣と違い周りの人に聞こえるのだ。

 何か話声が聞こえたような気がしたが、それ以上にセリムの吹き出しに反応するマデロス宰相である。


「ケイタも是非宮廷魔術師に魔術訓練で指導して貰えぬか?」


(む、教えられるものは何もないが、見学はしてみたいかも。ブログのネタ的に)


「え? そんな大したことは教えられませんが」


「うん? 何を言っているのだ?」


 高等すぎて分からないボケを聞いたような反応をする国王である。

 話をしていると、デザートのフルーツが置かれるようだ。


「まあ! 私もケイタ様の魔術について触れてみたいですわ!」


(うん? 王女も魔法使うの?)


「シアンもそういっておる」


(シアンというのね。王子王女って5~6人いた気がするけど、名前分らんし、顔もうろ覚えでござる)


「では、折を見て。できれば、見学からお願いしたいです」


「なるほど、そうであるな」


 誉ある宮廷魔術師に、いきなり上から教えるのではなく、見学からお願いしたいと謙虚に思ったのだなと国王は判断したようである。

 そして、ブログネタのために見学さえできればいいと思っているおっさんであったのだ。


「いつ来ていただけるのですか?」


「それはえっと」


「ここにケイタとその仲間達が来ているというのは真か!」


 シアン王女が宮廷魔術師の話をしようとすると、ジークフリート殿下が食事の席に乗り込んでくるのであった。


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