異世界転生は腐女子にも容赦ない!
書きたいものを取り敢えず詰め詰め。
続きは気分で...。
【となりの吸血君】の更新はもうちょっとお待ち下さい(汗)
来週までには出来ます(汗)
朝にも夜にも毎日毎日、カップリング。
学校でも家でも何処でも、隙きあらば妄想と憧れシチュエーションを思い浮かべ、一人にやにやしている只の純粋な腐女子、それが私。
...で、何でそんな一般人が今異世界に転生してるんですか?
***
「怪しい奴を捕まえたぞ!」「良くやったわ、これでこの村も安泰!」
ちょっと待って下さい、状況が整理出来ないんですけど...。
本屋に行く途中、偶々通りかかった骨董品店で見つけたガラス瓶、あれを手に取った瞬間、私は突然骨董品店から農村(?)に来てしまった。しかも、それで今怪しい奴と農村に住んでいるらしき人物等に言われ、何故か私は体を縛られている。
幾ら何でも、この拘束プレイは頭の中の妄想までに留めておきたかった、と呑気なことを思う。
あ、お気づきかもしれないけれど、私は所謂腐った女子、別名腐女子という生物でして。普段は現代社会で影の如く暮らしているごく普通の女の子です、はい。
それにしても...。
普段現実世界とはかけ離れたアニメやラノベを喰い荒らすが如く見続け、妄想を捗らせる私自身、正直異世界転生をしたこと自体には戸惑いは全くないが、この設定自体にはかなり不満がある。大体、何が悲しくて私が縛られなきゃいけないのだ。縛られるのは、眼の保養になるイケメンで結構。私のような女子は影からそれを見てたいタイプなのに。
募る不満とは裏腹に、容赦なく農村の人達が「もう少しで憲兵が来るから。」などと言ってくる。嫌だ、来てほしくなどない。頼むから来ないでおくれ、と私は切に星に願う。
「そう言えば、憲兵さん達って皆カッコイイわよねぇ、私お嫁に嫁ぎたいぐらいだわ。」
やっぱり、来て下さい。異世界イケメンを見てみたいです。いや、でも私が捕まるのはちょっと...。ううーん、でもこんな2次元を生で見れる機会なんてまたとないはずだし...。
「おおっ、憲兵が参りなすったぞ!」
え、もう来たんですか?早すぎません??やばい、逃げなきゃ、と私は咄嗟に体を動かして、うぞうぞと匍匐前進のように這って逃げようとした。縄が擦れて、推進力を促す。それ行け、もう少し...。
「...何なんだ、コイツは。芋虫か?」
「だ、第2皇子様!!!」
だい、第2皇子様ァ?皇子様って、あの皇子?
見上げた視線の先には、凛々しい青年がまるで此方を醜い芋虫を見るかの如く、酷い面をして見ていた。咄嗟に私は自分の顔を地面につけると、またそっと皇子様の方を見た。
青色の綺麗な眼に、透き通った肌。金髪碧眼の、異世界でよく在りそうな青年がそこに立っている。どくん、と心臓が跳ね上がって思う。
この人、きっと受けだ、と...。
此処で解説をしよう。私のような腐った女子は、普通の女子がきゅん、とするシーンでさえも妄想をしてしまう。故に、本当ならば、此処でその皇子様の容姿端麗な姿にどきどきして、異性として意識し始める場面も、私にかかればほらこの通り、全くの違うシーンが出来上がってしまうのだ。
ちなみに分からない人にも言っておく、此処から先私が言う受けとは、ずばり女子役の者のことだ。つまり、まあ俗に言う突っ込まれる側。
「おい、そこの芋虫。」
キョロキョロと辺りを見回して芋虫を探す。
「お前だよっ、そこの大きい芋虫女子!!!名前はなんだ!?」
あ、私ですか。私は首を擡げると、必死に顔を取り繕って「し、不知火楓です。」と呟いた。こんな醜女をまじまじと見ないで下さい、と心の中で叫ぶ。
「ふむ、聞いたことが無い名前だが、やはり異世界転生をした輩なのか?」
「は、はい、多分そうだと思います...。」
声もぼそぼそ、掠れた声で呟きながら、何で私はこんなに男性と喋ることが出来ないのだろう、と目を瞑って思った。恥ずかしがり屋だから、交流が苦手だから、そして喪女だから。後は腐っているから?
「只の一般人か?」
「いっ、逸般人ではないです!!!!!」
「...はぁ?曲者か?」
...あっ、間違えた。一般人とは普通の者のことを指し、逸般人とは一般人に扮した腐女子のことを指す。やっちまった、漢字違いだ、と頭を地面に擦り付けると、必死の弁明を頭を擦り付けたまま叫ぶ。
「異世界転生者だから、一般人ではないということであって、深い意味は別に...。」
「あー、成程、分かった。」
皇子様、チョロっ。直ぐに、騙されちゃいそう。
だま、だま、騙される...。
「何だお前、にやにやしてどうしたんだ?」
ハッ、すいません、つい妄想癖が出てしまいました。慌てて咳をすると誤魔化して、「何でもないです!!!」と首をぶんぶん振る。皇子様が引いたように「そ、そうか。」と返事をしたのが聞こえた。やばい、めちゃくちゃ引いてる。皇子様の麗しき顔に縦線が入っているぐらい引いてる。
「...あのっ...あうっ...。」
眼鏡がずり落ちてしまった。手が縛られた状況なので、眼鏡をかけなおすことも出来ない。精一杯藻掻くが、基本運動神経が皆無な私は肌に紐が食い込むのが関の山だ。運動神経は遺伝だと言っていた若かりし頃の自分を激しく恨みたい。
「こっ、これ、取って下さいっ...。」
上を見上げて、そう呟く。すると、皇子様は何故か赤らめた顔をして、そっぽを向きながら「ひ、紐を外してあげよ。」と命令した声が聞こえた。このダサい醜女のお願いを聞いてくれた優しい皇子様、そんな印象が私の中で芽生えた。
だが、実際は違う、実は皇子様は夢高き童貞なのである!!!!!!!
此処で皇子様の心境の解説に入ろう。この誇り高き皇子様、実は女性に計り知れない夢とロマンを持ち続ける、正真正銘の童貞なのである。未だ触れたことがある女性は母親のみ、後は侍女でさえも触れれないというこの純粋を守る徹底ぶり、かの強固なガーディアンであろうと出来ないようなことをやり遂げている。流石とも言うべきだろうか。
そして、今眼の前にいる腐女子が縄を食い込ませ、潤んだ瞳で皇子様を見ている姿は、皇子様を酷く刺激するものなのであった。
つまり、兎にも角にも、皇子様の真の姿は悲惨なのである!
QEDか証明終了とでも言うべきであろうか、取り敢えずこれで皇子様の心境説明は終了する。
そして、そんな皇子様の真の姿など知る縁もない自分は、取り敢えず感謝の念にかられながら、精一杯のお辞儀をしてそれを体現した。「ありがとうございます。」と言うのも勿論忘れない。
でも、まあ拘束プレイの体験が出来たのは良かったかも知れない。もし異世界から帰れたら、その体験を元にまた、あれよこれよの薄い本を量産出来る。
そしたら、あ、あ、うふふ...。
ニヨニヨと気味の悪い笑みを浮かべてしまい、こほん、と咳をするとお辞儀をもう一回して去ろうと立ち上がった。微笑んだ顔をきりりと引き締め、「では、さようなら。」と呟こうとする。よし、準備が出来た。
「さような」
「おい、お前此処座れ。」
「...は?」
皇子様は赤らめた顔で、でも何処か断れない顔で執拗に馬に乗れと勧めてくる。しょうがないので、乗ろう。
そうして、私は皇子様に城に連れて行かれた。