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ラフスケッチ

本庄はソファーに座っておかみさんに

スケッチブックを開いて見せた。

おかみさんは本庄の横に座って

1枚1枚うなずきながらめくっている。


「何故人物がないの?」

「人物は苦手です」

「私を描いて?」

「いやいや、とてもとても」


最初は冗談かと本庄は笑って断っていたが

おかみさんは真剣な眼差しになって

両手を合わせた。


「お願いします。今に私を

1枚だけ描いてください。

  ・・・・お願いします」


本庄はじっとその瞳の奥に引き寄せられた。

執念が見える。この人は真剣だ。

よし描いてみよう。本庄はそう決心した。


スケッチブックをめくり4Bの鉛筆を

取り出す。すばやいタッチでデッサンが

始まった。瞬く間に出来上がる。

太いダイナミックな曲線だ。


1枚仕上がったところでおかみさんが姿勢を崩しかけた。

「そのままで、じっとして」

本庄の一言におかみさんの体はこわばった。


「硬くならないで、微笑んで」

少しやわらかくはなったが本庄は真剣な眼差しで

もう1枚をすばやく描く。激しいタッチで

それもすぐに仕上がった。


「できた!」

本庄とおかみさんはここで始めて微笑んだ。

同じ日付を両方に裏書する。


『2006.12.24。朱家角』

「OK。どちらがいいですか?」

おかみさんは見比べてはじめの1枚を選んだ。


「はい、じゃあこちらを記念に持って帰ります」

「ほんとにありがとうございました」


おかみさんの瞳は潤んでいた。

「来年来れたら又来ます。それじゃあ」

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