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「いや、これはお母さんにあげた物ですから

受け取るわけにはいきません」


「そうですか。母が年末倒れた時には、北大街

のおばさんに大変お世話になりました。

それではおばさんに渡しておきます」


「ぜひ、そうしてください」

娘は紙包みを抱いたまま、言った。

「分かりました。どうぞ上がってください」


懐かしいメイリンの部屋には去年の入選作が

飾ってあった。本庄は特選の2枚を開けると

横にならべて立てかけた。娘が叫ぶ。


「まあ、特選、2枚とも。綺麗なお母さん。

幸せそうに輝いている」

「お父さんも絵を描いておられたとか?」


「4年前、亡くなる直前に母を描きました。

それまでは文人画などの伝統的な絵ばかりで、

母は何度もせがんだらしいのですが・・・。

店に貼ってあるのがそれです」


「そうでしたか・・・・」

本庄はメイリンの3枚の絵に手を合わせ、

しばし黙祷した。


狂おしかった1年前の数日間。燃え尽きた

メイリンの魂がこの絵に如実に息づいている。

その眼差しを本庄はもう凝視できないでいた。


「すみません。私は仕事で義烏に行かねば

なりませんので。本当にありがとうございました。

お母様の冥福を心からお祈りします・・・・」


「いえいえこちらこそ。母に最後の命を吹き込んで

いただきまして、お礼を言うのは母のほうです。

ほんとにありがとうございました」


「では、失礼いたします」

と本庄が店の扉を開けようとした時、

人の気配がして扉が開いた。


ワンタン屋のおばさんと背の高い若者が立っている。

「おばさんと、医師の私の許婚者いいなづけです」


その若者が答えた、

「はじめまして。おかあさんは、最後はほんとに

幸せだったと思います」


本庄は何も言えずに黙したまま唇をかんでうなづく。

じっと涙に耐える。おばさんがそっと傍らでつぶやいた、


「姪っ子のメイリンはハンサムリーベンレンといる時が

1番輝いてて皆びっくりしてたのよ。ほんとにありがとう」

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