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救急車

最終日、ほんとは上海で一泊のはずが、

別れが辛くて翌朝一番のバスで

上海へ向かうことにした。


結局一睡もせずに愛し合って夜明け前、

放生橋の上で抱き合い、北大街の石畳

をゆっくりと歩きターミナルに向かった。


リュックの銀鎖がひときわ重く肩に食い込む。

ベンチに腰掛け寄り添いながら

指を絡ませ体のぬくもりを確かめ続けた。


始発は5時だ。

暗がりから人々が集まり始める。


「じゃあ、又来年必ず来るから」

ほてった瞳でメイリンは本庄をじっと見つめる。

今にも消え入りそうだ。瞳は虚ろに宙を舞う。


バスが来た。本庄は紙包みをリュックから取り出し、

しっかりとメイリンの手に握らせ、


「来年、12月、必ず来るから、これで治療を」

と耳元で叫んだ。

力なくうなずくメイリンの瞳。


バスが出る。何人かの見送りの中にメイリン

はたたずんでいる。まだ夜は明けない。

バスは走り出し暗闇にゆっくりと消えていった。


たたずむ数人の人影。メイリンはその場に

紙包みを抱きしめたまま倒れこんだ。

人影がメイリンを支える。


本庄のバスは暗闇の中を上海へと疾走する。

途中救急車とすれ違った。本庄は時計を見る。

それはちょうど12月24日午前5時30分だった。


メイリンは紙包みを抱きしめたまま倒れこんだ。

「メイリン!」

知り合いの人影が叫ぶ。


次の到着バスの迎えに来たその人は、

あのワンタン屋のおばさんだった。


おばさんは紙包みをちらりと開けてびっくり。

すぐに包み隠し大声で叫んだ。

「この娘は私の親戚だ。誰か救急車を!」

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