表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/22

おかみさんの部屋はこぎれいに整頓されていた。

なくなった老母と亡夫らしき写真が飾ってあった。

老母の写真の背景はこの理髪店だ。


昔のままの母の住居だったのか?

「主人とは文化大革命の頃に知り合ったの」

咳をしながらおかみさんはベッドの枕元でつぶやく。


「絵画の先生。伝統的な南画が専門だったわ」

又咳をする。

「だいじょうぶか?」


本庄が起き上がってやさしくおかみさんの背中をさする。

「ええ、だいじょうぶ。ちょっとむせただけ・・・。

文革で革命絵画を描けと執拗に迫られて、


5年間過酷な労働を強いられたわ。文革の嵐が去って

再びこの村の学校に戻ってきた。・・・そして結婚したの。

娘が生まれてまもなく胸の病が再発して・・・。でも、


最後に私を描いてくれたわ。

なかなか描いてくれなかったのよ。

頼んで頼んでやっと」


「肺病か?今ではすぐ治る」

「ええもちろん。私は大丈夫よ今まで1度も血を吐いたこと

はないしいたって健康。娘はそれで今上海の看護学校に志願

して、寮生活で頑張ってる。父や祖母の姿を見てるから」


「おばあさんも?」


「鍋1杯の血を吐いて死んだ。娘は真横でそれを見ていたのよ、

7歳の頃。近所の人も親戚もそれ以降あまりここには寄り付か

なくなったわ。あの北大街のおばさん以外は・・・・・」


「実は君の絵を描かせて欲しいんだ。にらんだ顔。微笑んだ顔。

とぼけた顔。潤んだ瞳。この5日間、描けるだけ描いて帰りたい」


おかみさんはうれしそうに微笑んだ。

「ありがとう。こちらこそよろしくお願いします」

二人は見詰め合ってそのまま、激しく抱き合った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ