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再会

片づけが終わる頃友人と奥さんが本庄の所へ来た。

「本庄おめでとう」

「大盛況だったわよ。本庄さんの水郷は特に好評。

来年もお願いできるわね」


「ええ、来年は『朱家角の女』という題で1品だけ

出品させていただきたいと思います」

「おっ本庄、ついに本音が出たな」


「1作品だけじゃだめよ。2つは出してね」

「いえ、1作品でも描きあげられればと思います。

もし描けても入選できるとは限りませんし、


その女の人がもういないかもしれません。

だけど今は『朱家角の女』という題で1作品、

なんとしてでも仕上げたいと思っています」


熱を帯びて話す本庄に友人夫婦はあっけに取られ、

「どうかしたのか、本庄は?」

「多分あの女性のことでしょう」

「なるほど」

と納得した。


あわただしい秋のシーズンも終わり本庄は12月

大阪から上海行きの船に乗った。朱家角へのはやる

思いを抑えて仕入れの義烏へ向かった。


今年は間違えずに4千本を仕入れて朱家角へ向かった。

去年と同じ曇天だ。バスを降りる。背中にリュック。

両手にスケッチブックと額に入れた2枚の絵を持っている。


バス停から路地裏へ。あった。去年と同じ『理髪』の文字

と理容のマーク。扉を開ける。誰もいない。

壁に去年描いたラフスケッチが飾ってある。


「有人阿?」(だれかいますか?)

大声で叫ぶ。奥から懐かしいおかみさんの声。

「シェーイ?」(どなた?)


「リーベン、ヤ」(日本人です)

「えっ、ほんと?」

「ほんとだよ。元気?」

「元気よ。又ほんとに来てくれたのね」

「ああ、またきた。またまた来る」


本庄は入選作の包みをほどいた。佳作と貼ってある。

おかみさんは笑みを浮かべて本庄の手元を見つめている。

額に入ったおかみさんの色彩を施した絵と、


放生橋からのすばらしい絵が現れた。

おかみさんは感極まって本庄に

思いっきり抱きついていた。

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