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肉奴隷から王子様!?  作者: 多人 重説
8/13

休息? いえいえ、嵐の前の静けさです。

さっき自己紹介をしたばかりなのにもう忘れるとは……歳か、こいつ。いや、それはないな。

俺がそんなことを考えていたら、そいつがペアのことを言った。

「おいおい、お前ペアのことも知らないのか?ペアはこの仕事でもっっとも重要なことといっても過言じゃないぜ。ちゃんと求人広告を見たのかよ」

溜めるなぁ~。それにしてもさっきから人を小ばかにするような言い方が少々癪に障ったが、それ以上に 疑問だったのがさっきこの男が言っていた「ペア」のことだった。今朝に念のためと思って求人広告を見ていたが、それらしき内容は見当たらなかった。だがこいつがうそを言っているようにも思えないし……いったいどういうことだ?

「いや、多分この子はちゃんと求人広告を見たと思うよ。そうじゃないとここにはいないし」

横から俺をカバーするようにここの先輩らしき人が入ってくる。

「中央公園のところにペアの内容があるやつを張っていただろう。あのデートスポットとして有名な中央公園だよ。あそこ有名な割には場所を知らない人とかが結構多いからね」

いや、場所知らない人が多いところにはるなよ。しかもデートスポットって、「彼女を守ります! 」とか言って入ってくるやつでもいるのかよ。

「まあ、たとえ聞いていなかったとしてもそのあたりのことは冷徹副社長辺りが説明してくれるだろうから大丈夫だよ」

そういって俺に優しく微笑んだ。……がさっきの奴は不満そうな顔をしていた。

と、そのことはいったん(永久に)隅に置いといて、副社長辺りが話をする……か。ということはここのトップと早くもご対面できるという訳だ。しばらく歩いているとステージのようなものがあり、そこに『新社員歓迎会』と書いてある。おそらくここでこの男がさっき言っていた「副社長辺り」があいさつでもするのだろう。

                             フッ!!

俺がここにきてしばらくいる突然あたりが暗くなった。まあ、パーティーの始まりのあいさつといえば停電からの司会者スポットライトという流れが自然だった前世の記憶がある俺にとっては。あ、始まるんだなぁとしか思わなかったが、俺の隣にいた奴は「な……なんだ停電か⁉……まさか、四次がまだあるのか!! 」と、まるで世界の終わりを見てきた顔になっていた。そんなのでこれから先大丈夫か?

というか前世ならともかくこの世界では停電という概念はないに等しいだろう。なぜ?に対する答えは簡単。この世界の主なエネルギー源は魔力だから。もちろん魔力切れというのもあるかもしれないが新しい奴が入ってみんなで初がお合わせをするときにいきなりの停電でこれからの不安を感じさせるようなことをする物好きな奴はいないだろ……

「レディースアーンドジェントルメェーー-ン!! 」

おそらくかっこよく決めるつもりだったのだろう。イケボを意識した声を出し顔も決め顔っぽかった。しかし完全にボリュームの調節を間違えたのであろう。マイクから放たれた轟音は俺たちの耳にダイレクトアタックを決めてきた。ちなみに俺の隣にいた奴が発した言葉の「まだ四次がある」とはこのことだったのだと頭の中で勝手に理解してしまった自分がいたことは口が裂けても言えない。

そのあとマイクの調節に一瞬中断したが無事に(?)パーティーのあいさつが始まった。

「よし!……どうも先ほどは失礼新入社員諸君。入社おめでとう! 」

壇上の男が俺たちに言葉をかけるとパッと部屋が明るくなり、周りには100人前後の先輩たちが四方からクラッカーを鳴らしてきた。まあ、普通のところと比べると100と聞いて多く感じると思うが、この仕事である護衛職としてはどちらかというと少ないほうだ。主な鯨飲としては、入社までの道が他と比べて少し厳しいからだ。まあそのほかにも殉職が他の職業と比べるとどうしても多くなってしまうことも挙げられるだろうが挙げるときりがないのでこのくらいにしておく。

「それでは、これから我が社の紹介を……」

「社長。自己紹介が先です」

「えぇ~、毎年やっているから今年くらいやらなくても別によく……」

「ないです」

……おいおい、こんな社長で大丈夫かぁ。……それにしてもあの社長の隣にいるやつ、どうも見覚えがあるんだよなぁ、誰だっけ? 決して俺は目が悪いわけではない、俺がステージから結構離れているから見づらいのだ。

「ではでは、私が社長のローザンだ。得意魔法は感覚系全般だ」

は⁉ただでさえ使える人が少ない魔法が得意って見た目によらず恐ろしやつだ。

(『見た目によらず』とはどういう意味かな。そんなに首を飛ばしてほしかったらいくらでも飛ばしてやるぞ)

それだけは勘弁……って脳に直接……あぁ! 思い出した。あの副社長三次のおっちゃんじゃねえかよ。はあ、今更だけどすごいところに入ってしまったなあ。

「そして隣にいるのが副社長のラージ君だ。大概のものは知っていると思うがまあよろしくというわけだ」

「先ほど社長からお話しいただいたとおり、ラージだ。連射魔法を自分の中では得意としている」

確かに幻影の時は連射しか使ってこなかったしな、まあ得意というよりは好きなようにも見えなくもない。

「さーて、忌々しい自己紹介も終わったところで、ラージ君わが社の紹介をよろしく! 」

あ、自分がやらないのですね。「紹介を……」とか言っていたからてっきりやると思っていたのに。

「それではわが社の説明をさせてもらうぞ。わが社は……」


その後一、二時間ほどでパーティーはお開きになった。しかし、俺はパーティーが終わり一息ついた安ど感とは裏腹にある危機感を抱いていた。その危機感の正体はラージが話していたことにある。ラージは『ペア』についての話でこんなことを言った。「この仕事は一人では相当危険なために任意と組で動くことがほとんどだ、ただしここにきて日の浅いものどうしが組んでも何の意味もなさない。そこでわが社は恒例行事にも等しくなっている『スカウト』を先輩たちには行ってもらう。先輩たちに声をかけてもらうまではひたすら待て! 」と。これを聞いたときは焦ったがそのあとにさっき俺のカバーに入ってくれた先輩に声をかけられパーティーが終わった後にもう一度会ってどうするかを決めるという約束になった。……ここだけを聞けば「なんだ、別にいいじゃん」と思うかもしれないが俺はパーティーの間さっきの先輩以外に声をかけられていない。(他の奴は何人にも声をかけられていたのに)これがどういうことを表すかというと、この先輩のチャンスを落とすと、俺は俗に言うボッチになってしまう危険性があるということになる。この好機必ずものにする!と一人先輩との集合場所に向かった。



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