邪童はドS?
邪童 純心……侮れないやつだ。
あの弾丸の雨の中だ。避けることはできない。いったいどうやってかわしているのか。
よく観察してみるとすぐにわかった。
確信は持てないが避けていない。すべて受けているのだ。
「おい、どうやって受け止めてるんだ」
ダリがまたもや俺はわかってるぜと言わんばかりの口調で問う。この空気の中なら拷問並みだな。
言いたくないのかよくわからんが無表情で邪童は答える。
「別に何もしていない。この弾丸とやらが俺には何にも害を与えぬだけだ」
聞くと痛みすらないらしい。神経でも抜いてんのか? だがこれ以上ゆっくり話している暇はない。
何人かの魔法使いが攻めてくる。
俺みたいに誰かが考案したのだろう。よく考えればすぐに思いつくからな。
五人くらいのチームらしきものが群れで突っ込んでくる。
こういう敵は動物に例えるに限る。
よし、左からライオン、トラ、チーター、ゴキブリと名付けよう。
ライオン組は何か牽制をしてくる。あれはビビりだ。かろうじて弾丸をいなすレベルの魔法は使えるのだろうが魔力がほとんど感じられない。平均より少し多いか? ってくらいだな。
するとダリが隊長は俺だとでも思ったのかトラ組に突っ込めと指示する。
「俺についてこい。あの左から二番目のチームだ。俺たちが弱そうに思えたんだろう。チャンスだ。今こそ俺たちの力を合わせて戦おうぜ!」
「おう!」
半数くらいがよく声を出したが他は声を出さない。それも当然、トラ組が一番つえぇ。
「ウィンドガーディアン・ホルストキメス!」
再び俺が呪文を詠唱する。今日は威力は弱いが詠唱が結構短いのでこれしかない。
もうちょっと俺の魔法がいろんな方面の魔法に適応してたらいいんだけどな。
詠唱してから一秒後に戦闘意識満々で飛び出したダリとかが走るスピードを落とす。
この魔法は風の魔物を呼び出して手伝わせる、いわゆる召喚魔法だ。
召喚するにはその魔物が提示した勝負方法で勝ち、下僕にしなければならない。
負ければそれなりの代償が来る。危険な魔法だが、下僕なので対して魔力は使わずに済む。
これだけは何よりもコスパがいい。
しかも下僕なので意思疎通が楽だ。以心伝心という感じがじかに味わえるぞ。
「な! 何をする! 貴様! 裏切ったか!」
ダリがうるさく、止めてやってるのにわざわざ自分だけでも突っ込んでやると足を止めない。
他の奴らは素直にこっちへ引き戻されているというのに、何をやってんだか。
「くそっ、こうなれば! …………サークルランス! --うがっ!」
ダリは魔術を使い、ぎりぎり囲まれたところを一瞬のスキを作って逃げようとするが一人の奴の魔法で終わったな。しかもそいつの魔法の威力が半端ない。一撃で倒すとは……うかつに歯向っては殺されるな。
「あ…………」
リィが少しだけ声を漏らす。こうしている間にも他のチームが追いかけてくるがそんな時ではないのだろう。あいつは好みさえ当てはまれば絶対に落とす的な顔をしてたからな。相性があったんあろう。
「残念だったな。だが突っ込んだあいつが悪い」
慰めたつもりだった。
いった瞬間に他の男にバシッとたたかれた。
「もうちょっと女心を読め。あほが」
「そうそう。お前の判断は正しいが今の言葉はないと思うぞ」
ちゃんと相手の力量を判断して、突っ込まなかったやつが俺にブーイングする。
「チッ」
俺はイラつきながらも反省しながら逃げる。
逃げるといってもライオンのところにだが。
「な、なんだこいつら俺らに歯向かう気か⁉」
ビビってるビビってる。お前らに散々八つ当たりをしてやろう。
俺は少し構えて二重詠唱を行う。いや、二重詠唱とか言ってるが詠唱をしていないのでできることだ。
かなり頭を使うが、多人数をやるにはちょうどいい。
俺は盾を起動させ、それをフル回転させる。
一つの技だが二つの魔法を使っている。そのおかげでコスパはいい。
「おらおらおらー」
悪役のようにどんどん回る盾で相手を傷つけていく。
この世界の奴らじゃなかったってことが強みになったな。誰もが魔法は相手との接近戦を考えずに使うだろう。だがそれは根本的に間違っているのだ。強い魔法ほど詠唱を必要とし、詠唱をしない魔法でも、一発で殺せる魔法など数少ない。それならば接近戦をしたほうがよほど効率がいいのだ。魔力を大量消費せずに一発で倒せるからな。
「おいおい、俺らの分も置いとけよ」
「まったく、勝手な奴だ」
「へっ 好きかって言っとけ。俺をイラつかせた罰だ。」
あっさりと口論は終わるがみなの視線は爆音を上げ激し戦闘をしているゴキブリとトラのほうに集中している。
「……………なんだあれは。あんなのと俺たちがやるっていうのか」
「嘘だろ。むちゃくちゃだ」
アンジェとダンテが今にも死にますって感じだ。
「ダイジョブダイジョブ。あれはね。自滅するから」
邪童がなぜかはわからんがそうつぶやき俺に耳を貸せと言ってくる。
「あいつらはな…………」
五にょごにょとつぶやき、やれというような顔でこちらを見る。
「仕方がねえな。わかった。やってやるぜ。」
そういって、俺はそこそこ魔法を使えるやつを使って同時詠唱を行う。
「いくぞ! セルミカル・ラシンカゼビヲン………………」
俺が中心になって詠唱する。
ダンテがアンジェと。
魔法を均一にするために強いものが弱いものを補助する。
この魔法の能力もそうだ。俺は根っからの防御魔法だ。だからこの魔法も防御魔法。
弱い奴が強い奴と戦った時に弱い奴の防御力をあげる。
これによって戦いは長引き、結果両者が損傷の激しくぼろぼろになるというわけだ。
邪道も恐ろしい奴だ。こんなことを思いつくなんて…………Sだな。
そしてその通りとなった。ボロボロになったやつを何もしていない邪道がはたく。
これで完成。十人になれば終わりだが、仲間以外が生き残るとうっとおしいしね。
やっつけちゃいましょう。邪童は一生恨まれる気がするが。
こうして三次試験は幕を閉じた。




