そんなのありか? とんでもマジック
「受ける」「避ける」「相殺する」「逃げる」「仲間を盾にする」
この中でだったら受けると避けるが実用的だな。
いや、ダメージ弾の威力とダメージがどの場合食らってしまうのかが分かっていない。ならば避けるが1番の選択肢と言えるだろう。
「スケルトル・ブルーノ!」
俺は透明化の魔法を使用する。
以前、スパイの仕事を一度引き受けたことがあったときに覚えた魔法だ。先輩から教わったのだが、なんでも空気、光、次元、時空、物理の希少な魔法色を使っている弱小魔蟲から閃いた魔法らしい。それを代々受け継がれてきた魔法だ。おそらくこの場の全ての人間が初見だろう。
みなが勝手に自滅したと勘違いしている。
それもそのはず、審査官はダメージ弾を連発していた。
ただの連発であれば二次試験をクリアした者である。
誰もがその程度の魔法、見切って容易に切りにかかるだろう。
だが審査官は違った。360度、八方向に常時ダメージ弾を放っているのだ。しかも、手振りなどの動作すらない。
「オートか……」
誰かが呟いた。オート。強すぎる。魔法とは本来、自分の能力を魔力を使って強制的に発動させる、もしくはその場所にいる妖精、悪魔、神、魔物の力を借りて発動させるという意外に強引な代物である。
前者は自分の力を使うが、無理に行使するため使用回数がかさなったり、器をはるかに超えた魔法を放てばたちまち、体は耐えきれなくなりボロボロになるだろう。
一方他種族の力を借りた場合、其れ相応の依頼料というものが発生する。だが魔法に使える種族は大概、魔力が力の源である。つまり魔力を贄とし、発動させる。これには実際に発動させるための魔力に上乗せした量の魔力を要求されるため、コストパフォーマンスが悪い。
これらの原因から、オートで発動することはかなり厳しい。前者は常に360度全てに連射することを考えると、自分の身がもたないだろう。魔法を放つには魔力を相手に対し殺傷能力のある形態に変化させ、それを勢いよく放たねばならない。そうなると、全身の機能を変化させ、魔力を放出するという機能にする必要性がある。するとどうだ。たちまち全身粉砕だ。そこまで変えれるほど人体は強くない。むしろ手だけでも発動できれば十分だ。
ちなみに後者は簡単。魔力がもたない。
だからオートな魔法は発展してこなかった。
俺の目の前でおこなわれているが、未だ理解できていない。
すると他の奴らがしびれを切らして、というか受け身では耐えきれなくなり攻撃に身を転じ始めていた。
「ディフェンドオプション・フィカームケイト!」
もう呪文を見ただけでわかるだろう。防御系の魔法だ。見るとおっさんである。ここは嫌でも攻撃に転じなければ勝てない状況。なのに防御に魔力を費やすとは……、ビビってるな。
ディフェンドオプションの魔法を使っただけでそいつの魔法の力量が知れる。小学生レベルの魔法陣生成呪文だ。魔法陣にはある程度型があって防御系の魔法にはこれ! とか、攻撃用にはこれ!っていうのがある。そういうのは学校で習う。
しかし本当に強い魔法使いならば魔法陣は自分で作る。いまや強者は必ずといっていいほど自分の編み出した魔法を使用する。だからほとんどが魔法を自作する。もちろん授業で習うレベルの魔法の中にも強い魔法が存在する。だがあくまで魔法は自分の能力を引き出して使うのだ。それぞれ合う合わないというのが存在するからな。
だから当然のように魔法陣にもその魔法にあった魔法陣が1番の威力をアップさせるコツだ。それを怠ってこんな魔法陣を使ったやつはヘタレすぎる。
泣けてきちまうぜ。
ちなみにそのおっさんは魔法を使った数秒後、盾らしきものが吹っ飛び、魔力を無駄に使っていたらしく魔法の発動もままならないまま呆気なく終わった。
それ以外の奴らもてんでめぼしいやつらはいない。
俺はもともと防御派なので余裕で弾丸をそらすことに成功している。
よく見ると弾丸の形状が気持ち悪い。なんぜか紫色のスクリューのにょろにょろしたような形の弾丸だ。
触れたくない。
さらに五分後、大半の奴らが終わった。
そこにクール? って感じのやつが審査官に話しかける。
「なああんた。幻影だろ」
「!」
生き残っているやつのほとんどが頭の上にビックリマークを乗せる。
俺もだ。
「ほう、よくわかったな」
「当然のことだな。あれほどの連射であれほどの範囲。あれを五分と続けていられるのは流石におかしい。さらには当たっても人体に損傷はないときてる。これは明らかに魔法じゃない。いや、本当に魔法は打たれていないということだ」
男は気障ったらしくはないので俺の敵意識はないが、最初の当然のことだなっていうのにはイラついた。
だが俺にはまだわからないことがある。それを他の奴らが代弁してくれた。
「ならどうやって俺たちは弾丸を受け流しているんだよ。もしも幻影だとしたらさわれないはずだろ!」
「はぁ、やれやれ」
男はため息をついて手野平を上に向けて横に出し、肩をすくめる。
やっぱりうざいから嫌いだ。
ただし、その間にも魔法でしっかりと防御しているのでその点は尊敬するが。
俺は気障ったらしいやつは嫌いだがそれ相応に魔法が使えるなら別だ。
いつかこいつと一緒に仕事をして見たいものだ。
その前にキザったらしさを矯正してやるが。
あと俺は勉強は一応できるつもりなので幻影に関してもよく知っていた。
幻影にはセンサー付きのものがある。それを応用すれば反射角度を計算して自動的に実物のように跳ね返ることが可能なのだ。さらには耐えきれぬほどの魔力を感じても自動的に消滅することができる。これがさっきのバカに対する答えだ。
キザ男がそうこたえると遂にあることに全員がきずいてしまった。
「おい、まさかとおもうがなぁ、俺たちが10人切るまで終わらないってことか? なぁ?」
弱そうな男がそういう。そこで審査官が答えた。それは悪魔の言葉だった。
「きずいてしまってはしょうがないな。そのとおり、この状態ではいつまでたっても永久に試験は終わらぬ。よって後すべきことはわかっているだろう? 戦え。そして勝ち取れ。それができるかはお前ら次第だ」
そういって審査官は無表情になった。今までは幻影であることを隠すために細かく表情を変えていたのだろう。だが今はすっかり機械のような冷酷さを放つ人形だ。
……仕方がねぇ。やるか。
周りの連中も目つきが人を狩る目になっている。
俺は透明化の魔法を解き、呪文の詠唱の準備を即座に済まし、詠唱する。俺の不得意な魔法であり、最もこの場に適した魔法を




