―――一体どうしろと
「・・ちゃーん。朝だよー」
気がつくと眠っていたらしい。背中にポカポカと日の光を感じる。
「蓮ちゃーん」
あ、階段登ってきてるなぁ。
かたい机に突っ伏したままの体は、バキバキにかたまっていて、起きようとしてもなかなか言うことを聞かない。
「おーい」
段々と声が近づいてくる。
控え目なノックの後、ためらいがちに扉の開く気配。
んー。と気の無い返事をして、手首から先だけを振る。
ここにいるよ。もうちょっとだけ寝かせてよと。
深夜までかかった大切な図面を汚さないよう、よだれを垂らしてないか反対の手で顔のあたりを探る。
よかった、大丈夫そう。
もうひと眠り・・・・したいなぁ・・・・・・・・・
ため息とともに、人が横に立つ気配がする。
カーテンが開かれ瞼に感じる明るさにますます顔を机に押し付ける。
「また机で寝ちゃったの?蓮ちゃん。風邪引くよ。それにほら、早く起きないと。」
ため息混じりに肩を揺すられる。
まだ眠いー。
「起きないなら・・・ーするよ」
耳元に囁かれる、少し低いかすれた声。
違和感に顔を上げると、幼馴染がニコニコと横に立っていた。
「イト、今なんか言った?」
「おはよう♪」
疑問は挨拶でかき消されて、はいっと差し出された手には大きなバケツ。
「水汲みお願いね」
「ん?」渡されたバケツと幼馴染を見比べる。
まだ頭が起きてこない。
「私だっけ?」
「そうです」
「昨日は?」
「僕だったよ」
「一昨日は?」
「それも僕でした」
「じゃあ、今日も・・・」
だーめと、頭を小突かれ、立たされ、背中を押されて、部屋から追い出される。
早くしないと朝ごはん抜きだよーと、お母さんみたいな声を背中に聞きながら。
仕方なしにバケツを持つと、とぼとぼと家の裏手の井戸に向かう。
水を汲み、ついでに顔を洗って、首にかけたままのタオルで拭う。
「なんだかなぁ~」
つぶやいて見上げた空は、高層ビルに囲まれ四角く切り取られている。
二階建ての小さな家を振り返ると、ちょうど換気ののために窓を開けた幼馴染、有栖川 射兎の姿が目に入った。
周りのビルとは明らかに異質な、木造のかわいらしい2階建ての家。
出窓から身を乗り出すようにしていると朝日を浴びてキラキラと光る色素の薄い髪の毛、日焼けしづらい肌と相まって、天使か!って突っ込み入れたくなる。
遠く聞こえる小鳥の声と相まって、つくづく平和だなぁ。
まぁぐるりと囲むビルが城の一角なんだから平和なのは当たり前なんだが。
中庭に一軒家立てて、周りは壁で囲まれてるのに日当たりも良好とか、どんだけでかい城なんですかって思う。
この庭の中しか知らないけど。
ちなみに私はごく普通の日本人だ。
なんで城なんかにいるかって?
なんかねぇ。異世界召喚ってやつ?ラノベにありがちな。
どうやらあれらしい。
その手の小説は好んで読んでいたけど、まさか自分がねぇ。
ただ小説と違ったのは、ロボット、リニア、なんでもこーいな世界。
若干オーバーテクノロジーな世界に召喚されたってことです。
いったいどうしろと⁉
なにぶん初めてのお話故、生温かく見守っていただきたく思います。