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面影を重ねる
「手品師の独り言」
説明は難しい。
手に持っていない物は
つながりがうすいからだ。
いつもはイメージで補っているけれど、
もう、それもできなくなってきている。
おもちゃのおまけ、
傷の入ったシーディー。
抽象的で悪いが、
これしか方法がなかった。
残されたもので
語るしかなかった。
「あり得たかもしれない未来」
自分一人だけ
清いままだから
この世は生きにくい、と
話す彼に、
あなたはどんな言葉を
かけるだろう。
私は
彼のあの瞳が
忘れられないまま、
じっとしている。
じっと、
どうすればよかったのかと
今も考え続けている。