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序章②

 「えっと……ここで合ってるよな?」

 閉鎖された地下シェルターの通路の一角で呟く影が一つ

 「何百年も前の地図だしなあ、ホントにあるのかね」

 居住区画の水供給設備の老朽化により生活が困難になりつつあった為、新たな居住区画の開拓をする必要があった。

 「何で俺がこんなことしなきゃならねーんだ……そりゃあ《長》直々に頼まれたんじゃあ断れないがよ。はぁ」

 ため息をひとつ吐き出し、気を取り直して地図を再確認する。

 大昔に大きな戦争があったらしい。その時シェルターに逃げ込んだ人々が生活を始めたのだが、シェルターそのものが広大すぎるのと、細い通路で絡まるようにブロック毎に連結している為地図を見てもこうやって間違う事もあるが、地図が無ければ永遠の迷子である。

 イワンは地図と周囲を交互に見ながら自分の位置を確かめる。

 「きっと区画を間違えたんだな、多分ここだ。ここからだと遠回りになっちまうなチクショウ」

 どうやら場所を間違えたらしい。場所は手持ちの地図の端で、ここから先は情報が全くない。

 「このまま進んでたらもう戻れなくなってたな。仕方ない、来た道を引き返そう。」

 は今まで来た道を振り返り、歩きだそうとしていた。その時。

 ガンッ──

 背後にある通路の先から、何かモノがぶつかるような音がした。

 「なんだ?」

 振り返るがその先に何かが居る気配は無く、耳を澄ましてみたが音はもう聞こえてこない。

 「うーん、折角だし少し調べてみる・・・・・・か?」

 目印の小型ライトを一つ地面に置くと、男は音のした方へ歩き出す。

 ここから先は地図にも無い区画の為、自然と慎重な歩みへと変わっていた。

 「暗礁区画か」

 男は歩きながら呟く

 「やっぱ思いだしちまうな、あの言葉」

 幼い頃から常に聞かされてることがある

 『暗礁区画の先へ行ってはいけないよ。そこには厄災があるからね』

 意味は解らないが、大人達から何度も聞かされるので子供達は一語一句違わず覚えていた。

 おそらく遠くへ行って迷子になってしまわぬよう子供へ言い聞かせる戒めだと考えていたが、いざ自分がその暗礁区画へ足を踏み入れるとなるとなんだか悪いことをしているようで、軽い興奮を覚えていた。

 「まあ、確認するだけだし・・・・・・すまねえなじいちゃん」

 ガンッ──

 「また音が……」

 自然と早足になる。

 「出るなら出てみろ厄災」

 震えた声で強がる。

 少し歩くと狭い通路は終了し、大きな部屋に出た。

 目の前に大きな丸い蓋のような扉があるが、それ以外は何も見当たらない。

 ガンッ──

 ビクッとして身構える。

 音のする方にライトを向けるとそこには──

 「ただのつり下がった箱か……」

 丸い蓋の側で天井からつり下がった小さい箱のようなものが揺れており、時折壁にぶつかっていたのが音の原因だった。

 「でも何で揺れるんだ?」

 当たり前でもない事象に疑問を抱くイワンは箱に近づく。

 ヒュウ──

 「風か……?」

 どこからか風が吹いているようだった。

 「この蓋の隙間からきてるみたいだ」

 丸い蓋に視線を移し、調べてみると、丸い蓋と壁の間にわずかに隙間があるようだった。

 「この蓋、開くのかな?」

 風の元を知りたいという好奇心が芽生える。

 「どうやったら開くんだろう……むんっ」

 力押しで押したり引いたりするがびくともしない。

 「流石に力押しじゃ無理か……ん?」

 その時、興味を失った箱の事が気になり振り向くと、それはただの箱ではなく、二つのボタンがついた操作端末であることに気付いた。

 「もしかしたらこいつで……」

 〝Open〟と書かれた方のボタンを押してみると、丸い蓋に変化が生じた。

 金属がこすれあう音が響く中、丸い蓋上の扉が奥へ沈み、横へ転がる形で姿を消し、目の前に通路が現れた。

 「や、厄災から身を守る為に封印してたとか、そんな事無いよな……」

 やってしまったものは仕方ないと無理矢理気持ちを落ち着かせながら、通路の先をのぞき込む。

 ヒュウ──

 風が吹き付け、嗅いだことのない臭いがした。

 「なんだろう、奥に光が」

 奥を見ると四角いドアのようなものと、その先から光が漏れていた。

 気付けば通路に入って歩いていた。

 光に導かれるように進み、ドアの前まで辿り着く。

 「少し開いてるな、ここから風が漏れてたのか……しかしこれは」

 ドアノブに手を掛け、ゆっくり引く。

 「うわ!」

 全身が光に包まれる。

 「まぶしい。なんなんだ」

 ずっと暗い通路を歩いていたからというのもあるが、普段生活している区画の光をはるかに超える光量に晒され、目を開けることができない。

 暫くするとなれてきたのか、やっと目を開けることができた。

 そして目の前の光景に絶句する。

 「ここは……何だ?」

 目の前に飛び込んできたのは緑そして見上げると青と白。

 「まさかここ、〝外〟なのか……?」

 居住区の書斎にあった絵本や資料で何度も見たことがある昔あった外の世界。

 戦争により厄災に塗れ、全ての緑が燃え尽きたと聞いた世界。

 そんな、緑の木々と天井の無い、空と雲が見える世界を生まれて初めて見た。

 「皆に知らせなきゃ……!」

 これまで来た道を走りながら顔は喜びに歪んでいた。

 「俺たちは自由だ!」

 第二次世界防衛戦終結から300年、人類は再び地上に戻ってきた。

 

ここまでが序章となります。

本編は近日中にUPします

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