セアンという人
「お母さんが…?」
青空は戸惑いを隠せずにいた。
「いや…、俺の勝手な予想だ。話が早すぎたな。」
しんと張り詰めた空気が5人を包んだ。
「今日はもう遅いから泊まってけ。お前ら飯作るから手伝え。」
「OK!久しぶりのタカ先生の飯やなぁ、な?かなと?」
「ん?あ…そうだな!先生、手伝うよ。」
皐月と奏斗は明るく振舞っているようで、美紅は無言で立ち上がり、青空の頭に手を載せた。
「あなたはここにいな。少し一人になりたいでしょう?」
「…。」
青空は何か言いかけたが、美紅はそれを見ずに振り返りタカユキの方へと歩いていった。
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その日の夜、青空はふと目が覚めると、無意識のうちにあの絵がある部屋にいた。
その絵は青白い月明かりに照らされて昼とは変わった表情を見せている。
「眠れないのか?」
後ろからタカユキに声をかけられた。
「なんか、目が覚めちゃって…。
あの、タカ先生?」
「ん?」
「この絵の意味、そのうちわかるって言ってましたけど、どういう事なんですか?」
すると、タカユキはふっと笑ってみせた。
「そらは昼の絵と、夜の絵どう見える?」
その問いかけに、青空は改めてその絵を見た。
「私は…、夜の方が綺麗に見えます。夜の方がこの女の人が優しく見えるというか…。」
そう言うと、タカユキは再び優しく微笑んだ。
「それが答えだ。」
青空はやはりわからない様子でタカユキを見た。
「この絵を描いたのは俺だ。それで、この絵のモデルはセアンとそらだ。俺がこの絵を描いたのはセアンがお前をここに連れてきた時。その日も夜だった。ひどく不謹慎かも知れないがその時、セアンが美しいと思ったんだ。」
タカユキは少し頬を赤らめせて答えた。
「これが私のお母さん…。」
「俺はなぜセアンがお前の記憶を隠したのかはわからない。だけど、そらとほかの3人がいいと言うなら会いに行くといい。」
ハッと青空はタカユキを見た。タカユキは少し寂しげな表情をしていた。
「まぁ、俺は今夜は寝るとしよう。そらももう寝なさい。」
そう言ってタカユキは大きなあくびをしながら去って行った。青空も自然と眠くなってきて部屋に戻った。
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青空が目を覚ました場所は小高い丘だった。そこにはやはり黒い服を着た女性と小さな女の子がいた。
そして、黒い服の女性は泣いていた。
「×××××、なんで泣いてるの?」
少女は女性に聞いたが、女性の方はなにも答えない。
「×××××?」
「××、ごめんね。ごめんね…。」
女性は少女を抱きしめるとしきりに謝っていた。
「お母さんっ!」
青空はたまらなくなって口に出した言葉だった。
黒い服を着た女性は青空のほうに顔を向けると、そこには
歪んだセアンの顔があった。
めっちゃ遅くなりました…。ごめんなさい!
今回はタカユキと青空の会話が多いです。あの絵の意味というか存在意義みたいな事です。
あと1話位でこの章終わって、次から本格的に旅し始めると思います(多分…)。
つたない文章と内容ではありますが、読んでいただきありがとうございます。
誤字や何かあったら教えていただけると嬉しいです。