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ひなちゃんと赤いふうせん

作者: 天野 進志

友だちの子どもの思い出を、子供向けの話に書いてみました。

 ひなちゃんと赤いふうせん


 ある日、ひなちゃんはお母さんとしんせきのお姉さんと一緒にデパートへお出かけしました。

 デパートでひなちゃんは、赤いふうせんをお店のお姉さんからもらいました。ふうせんはハートの形をしていて、ぷかぷか浮かんでいました。

 ひなちゃんはとてもうれしくて、ふうせんについていたヒモをぎゅっとにぎっていました。

 お母さんがひなちゃんに「ふうせんが飛んでいっちゃうから、手にぐるぐるしようね」と言っても、いやいやをして手をはなしませんでした。

 ひなちゃんは手にぐるぐるしなくても、しっかりヒモをにぎっているからだいじょうぶだと思っているようでした。


 デパートからのかえり道。

 ひなちゃんがちょっと気をぬいたすきに、手からふうせんのヒモがするりと抜けてしまいました。

 「あ」

 ひなちゃんは小さくこえをあげました。

 ふうせんはふわりとうかび、どんどんどんどん空に上がっていきます。もう手がとどきません。

 お姉さんが「ふうせん、とんでいっちゃたね」と言うと、ひなちゃんはとても悲しくなって泣きだしてしまいました。

 泣いてもふうせんはもどってきません。

 そのようすを見ていたお姉さんがひなちゃんに、「もう一回ふうせんをもらってきてあげる」と言いました。お姉さんはそう言うといそいでデパートにむかって走っていきました。

 それでもひなちゃんは泣いています。


 お店のお姉さんがデパートのふうせんをくばっていたところに戻ると、さいごの一個を小さな女の子にあげているところでした。お姉さんはがっかりして悲しくなりました。

 「ひなちゃんにふうせんがあげられなくなっちゃった…」


 ひなちゃんは泣きやんでいました。でもぼーっとしているみたいです。

 「ふうせん、ぴゅーって」

 「ふうせん、ぴゅーって」

 ひなちゃんはお母さんに二回そう言いました。

 「ふうせん、ぴゅーしちゃったねえ」

 お母さんがやさしくひなちゃんに言いました。

 ひなちゃんはまた悲しくなって、なみだをこぼしました。なみだはぽろぽろぽろぽろとかわいい目からこぼれてきます。

 ちょうどそのとき、お姉さんがもどってきました。

 「ひなちゃんごめんね、ふうせんなかった」

 お姉さんが言いました。ひなちゃんはなみだをこぼしたままじーっとしていました。

 「じゃーん」

 お姉さんはそう言うと、うしろにかくしてあったふうせんを出してひなちゃんにわたしました。

 ひなちゃんの目のなみだがぴたっととまりました。ひなちゃんはふうせんのヒモをぎゅっとにぎりしめました。


 お姉さんは、お母さんにせつめいをしました。

 「最後の一個が目の前でなくなっちゃったけど、見本用に一個かざってあるのを見つけて、係りのお兄さんにお願いしたの。『ひなちゃんが泣いているから、これをゆずってもらえませんか』って。そうしたら、お兄さんが『どうぞ』って言って親切にゆずってくれたの」、と。


 ひなちゃんはお母さんに言いました。

 「ぐるぐるして」

 ひなちゃんはもうふうせんをぴゅーしたくなかったので、「ぐるぐるして」とお母さんにおねがいしました。お母さんはひなちゃんのうでに、ふうせんのヒモをぐるぐるしました。

 「ぐるぐるして、ぐるぐるして」

 ひなちゃんはお母さんになんども言いました。ヒモをなんどもなんども、うでにぐるぐるしてもらって、ひなちゃんはちょっとだけあんしんしました。

 

 ひなちゃんはお家につくまで、そしてついてからも、ぐるぐるまいたふうせんのヒモをしっかりとにぎっていました。

 

   おしまい

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― 新着の感想 ―
[一言] かわいいな。 私はこういうぼんやりした子供だったので、読んでいて少しうれしくなった。
2015/06/02 22:34 退会済み
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