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バスケやろうよ  作者: みなもと とおる
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金曜バスケ

 10月。綾は無事に「使用期間」を終えて正規職員になれた。あまり世間に知られ

ていない話だが、公務員には「使用期間」があるのだ。

 ケースワーカーとして半年。無我夢中だが楽しく、そしてあっと言う間の半年間。

仕事はもちろんだが、バスケは週1回の京浜区役所や福祉局のバスケ練習に参加して

いた。

「綾。無事に本採用(正規職員になったこと)になれたし。金曜バスケに行かな

い?」

 妙がおもむろに「金曜バスケ」というバスケの話をはじめた。

「くっくっくっ」

 周があの背中で笑うリアクションを見せた。

「金曜バスケですか?金曜日のバスケですか。」

「金曜日にやるバスケ。」

 あたりまえのやりとり。木曜日にやって金曜バスケでは変だ。

「スポーツ会館で毎週金曜日にやるの。ここは役所の人より、地元のバスケ好きが集

まるの。」

「チームでは無いんですか?サークル?」

「一応、私と田中さんが代表でやってるんだ。ルーツは周さんだよ。」

 とにかく、綾も金曜バスケに参加することにした。


 金曜日になった。綾は妙と田中とスポーツ会館にいた。ここは高速道路の下の体育

館で毎週金曜日は田中たちが定期的に予約していた。

 登録名は「ブザービーター」だった。今まで綾が参加した役所のバスケとはメンバーが違っていた。

 アップの練習も無く、10名集まった時点で10分ゲームを始めるらしい。

 7時に3人がスポーツ会館に来ると、もう何人かの男子がシュート練習をしてい

た。

 逆サイドでは1組の男子が1オン1をやっていた。

 綾たちは着替えてストレッチをやった。

 7時半ごろ、10人集まったので田中がみんなに声をかけた。

「ゲームやりまーす。男子が背の順。じゃ、二人はぐーぱー。」

 自己紹介も挨拶もなく、チーム分けがされた。 

 女子は綾と妙の二人だけだったので、お互いが別のチームになった。

綾は田中とも別のチームになった。自己紹介が無いまま、ゲームが始まった。10人

なので11点先取のゲーム。

 ジャンプボールは無く、ジャンケンでボールを決めた。

 ガードは女性のように細身の選手。ドリブルでスリーポイントラインの左45度ま

で来たら、ディフェンスも付く間も無くシュートをうった。

「パスッ。」

 いきなりのスリー。相手のチームはエンドから妙がボールを入れ、田中がドリブル

で運んだ。裏からゴール下にきれた長身の選手への田中からの速いパス。それをディ

フェンス側の金髪のセンターがカットした。そのインターセプトしたボールをさっき

の細身の選手にトスするようにパスすると、目にも止まらない速さのドリブルであっ

と言う間にゴール下に入り、レイアップ。

「はや~っ。カイダくぅ~ん。」

 妙がため息をつくように言った。カイダくん。何という速いプレーヤー。でも、自

分もアピールしなきゃって綾もあせった。それには「走る」しかない。「こいつ、走

れる。」ってカイダくんに思ってもらわなければ自分にパスはしてくれないと、綾は

考えた。

 次の攻撃のとき、カイダくんがドリブルで持ち込もうとした瞬間、綾は思い切り

ダッシュをし、右手を挙げて

「パースゥッ!」と叫んだ。それを見たカイダくんは弧を描くような絶妙なロングパ

スを綾の走り込む先に送った。

「ナイスパースゥッ。」

 と、言った綾はそのパスをキャッチミスしてしまった。

 しばらく惰性でストップ出来なかったが、情けない自分の凡ミスに綾はしゃがみ込

んでしまった。

3回目のミニゲームがはじまった。カイダくんもすごかったが、他のメンバーも速

く、そして強かった。ドリブルで自分で持ち込むスタイルのプレーヤーが多く、パス

は回すよりも裏をつくパスや綾では到底キャッチ出来ない速く、そして強いパスが飛

んで来た。

「このままじゃ。。つまんない。」

 綾にはさっきのミス以来、速攻のパスはカイダくんからも、ほかの誰からも来な

かった。かといって外でフリーをアピールしてもパスは来なかった。

 そこで、綾は自分でディフェンスリバウンドを取って自分でドリブルで持ち込んで

シュートするしかないと考えた。

「スクリーンアウトだ。」綾は自分から男子がリバウンドを待つゴール下に飛び込ん

だ。

 リングをボールがはじけた次の瞬間、綾はコートを転がって回った。

「ストッ~プ。」 

田中が皆を制した。妙が倒れている綾の方に走り寄った。 

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