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バスケやろうよ  作者: みなもと とおる
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バスケ練習

4月ももうすぐ終わり、ゴールデンウイークが始まる週の火曜日。綾は妙に誘われてバスケに行く予定になっていた。

「妙先輩。いいですよ。」

「オーケー。うちは田中さんと、石垣さん。遅れて三宅さんが来るかな。」

「5人でやるんですか?」

「福祉局が来る。あっちも5人ね。」

「楽しみ。大学のサークルで最後にやったのが3月だから2ヶ月ぶりな。」

「バスケやりた~いい。って手が震えて。」

「頼む~っ。バスケやらせてくれ~ってのどをかきむしる。」

「中毒ね。」

「周トレーナーは行かないんでか?」

「頼む~っ。仕事中はバスケの話は控えてくれ~っ。バスケ中毒の江川ワーカーに新人の中嶋ワーカー。」

 二人の会話が自分に及んだ小森は、何かの中毒患者のような振りをしながら答えた。

「周さんは京浜区バスケには来ないよ。市役所のバスケ部には行くけどね。あと、三宅さんも市役所バスケ部だけど、三宅さんは京浜区バスケには自分の予定が空いてたら来てくれるの。」

 そう説明する妙。

「周トレーナーも来てください。」

ぶしつけに言う綾を突き放すように小森は答えた。

「俺はお前等とはやらん。」

「大丈夫。職員大会には出るから。周さんは。」

 

 区役所で田中と石垣と合流し、4人は歩いて練習会場の渡瀬地区センターに来た。

着替えて卓球台やバトミントンのネットを片づけ、ゴールポストを下ろすとちょっと

素敵なコートが現れた。

「綾。ほら。ボール。」

 妙がボールを綾にパスすると、綾は久しぶりに手にする7号球のずっしりとした重みに何ともいえない気分になった。

 田中がおもむろに、フリースローラインからシュートをうった。

「パスッ。」

 うまい。きれいなフォーム。

田中さん。田中 俊之。年は綾より三つ年上の25歳。区役所では広報課に所属していた。バスケ歴は長いらしいが、市役所のバスケ部には所属していないとのことだった。

 もう一人の石垣さん。石垣 修。この人は田中に誘われて来ているとのことだが、バスケは素人みたいだった。年は30歳とのこと。

 妙がドリブルからレイアップシュートをした。やはりうまい。

 綾もセットシュートをうった。ボールは重くシュートははずれた。

 二本目。ボールはボードに当たりゴールに勢い良く吸い込まれた。

「ナイッシュー。」

 妙が満面の笑顔で叫んだ。

「スリーできる?」

「7号。重いですね。」

「フォームいいよ。シューターだよね。」

「2番か3番だったから。カットインもやります。」

「あたしと同じタイプ。周さんが喜ぶかな。」

「周トレーナーは?」

「1番。ポイントガード。」

 7時になった。体育室の横の扉に人影が見えた。

「こんにちは。」

 明るい元気な甲高い男性のあいさつの声が響いた。

「こんばんは。」

田中の返事に彼は笑顔で

「あはっ。こんばんはだ。夜だからな。」

 田中が扉に走りよった。福祉局のメンバーが来たのだった。

「たえ~っ。元気ぃ~。」

「まっさこ。元気ぃ~。」

 山下 香澄がいた。

「やました。さん。こんばんは。」

「綾。元気?香澄でいいよ。」 

 研修以来の再会だった。香澄の髪型が変わっていた。

「着替えてくるね。」

 福祉局は6人だった。しばらくして福祉局のメンバーがそれぞれ着替えて現れた。

「そろったかな。じゃあ、集まりま~す。」 コートの中央で田中が呼びかけた。

「今日は京浜区の練習に来てくれてありがとう。それじゃざっくり自己紹介してください。課と名前かな。じゃ、僕から。京浜区広報課の田中です。」

 田中が左側にいた妙の方に合図した。

「京浜区、生保課の江川です。」

 次は綾の番だった。

「京浜区役所 生活保護課の中嶋です。」

「課税課の石垣です。」

 福祉局の自己紹介になった。

「杉の木学園の増山です。」

 あいさつを訂正した元気な男性だった。つづいて妙とあいさつしていた女性だった。

「杉の木学園の小澤でぇす。」

 次は長身の男性

「精神保健センターのワーカーの宮本です。」

「福祉局総務課の栗山です。新人です。」

 次は山下だった。

「福祉局高齢者支援課の山下です。新人です。」

「中央区総務課の平田です。」

 一人だけ中央区の人がいた。

「それじゃ、いつものランシュから始めます。」

 田中のかけ声で練習が始まった。

「ランシュ」はランニングシュートのこと。コートの半分くらい(ゴールに向かって)の右側から真ん中にいるパートナーにパスを出して、パートナーはボールをパスし、パスを受けたにシューターはレイアップシュートをするドリル(練習)だ。

「2本ずつ。」

 田中が先頭に、妙にパスを出した。次の瞬間にはスムーズなレイアップが決まった。

「あ。いい。」

 綾の心臓が鳴った。久しぶりのバスケ。

「ナイッシュッ。」

 妙の声が響いた。綾の番だ。センターコートで香澄が左手をあげた。パスして走る綾の前に香澄からのバウンズパスがとんだ。

 次の瞬間、ボールがボードに当たりゴールに吸い込まれた。

「ナイッシュッ。」

 ゴール下に走り込んだ香澄の声が響いた。「よかった。」綾はほっとした。と同時に思わず顔が笑った。

 みんなうまかった。妙も余裕のレイアップシュートを決めた。


 かっこよかったのは、増山だった。彼は細身の長身だが、鋼のようだった。田中たちもスポーツマン体型の体つきをしていたが、増山はちょっと違う印象だった。彼はパスを出すとすごい速さで走り込み、返球されたボールをしっかりと受け、しっかりとステップを踏み、ゴールを抜け右手から左手にボールを持ち替えてバックシュートをうった。

 ボールはきびきびした動きでバックボードからゴールネットを抜けた。

 綾は自分がワクワクしているのを誰かに知られてしまうのではないかと、心配していた。さっと見ると香澄も増山を目で追っているように見えた。

「ジャンプ~。」

 妙の元気な声が響いた。パスを受けてのジャンプシュート。綾は2本ともリングにすら当たらなかった。へこむ自分と対照的に妙と香澄は2本とも決めていた。もちろん、田中や増山は高い打点から確実にジャンプシュートを決めた。


「なか~っ。」

 ポストのプレイ。ハイポストという台形のラインの右前に立つパートナーにパスを出し(このプレイではパスを受けたパートナーはポストマンになる。)自分は走り込んでボールをもらい大きくステップしてゴールにレイアップシュートやジャンプシュートをするドリルで、スクリーンプレイをイメージしたものだ。

 綾はなにも考えずにその流れの中にいる自分を、うらやましく思った。

その後、対面でのジャンプシュートというドリルを右45度、フリースローライン、左45度でやり、その後、センターエンドコートからの2対1というドリルをやった。

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