表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バスケやろうよ  作者: みなもと とおる
4/39

小森 周

初出勤の日(役所的には初登庁っていうのかもしれない。けど、そんな大層な職場ではなさそうだった。)は、新人には特別な日である。、

 しかし、トレーナーの小森は綾の面倒を見るという態度ではなかった。

 ざっと業務の説明をして、綾が担当する地区の地図を渡し、そのファイルのある棚を教えた。

 「えーっと。生活保護のワーカー研修は明日からなんだよな。今日は俺の客と、さやかの客が相談に来たら、そのときに同席させてっと。あとは、ケースのファイルを見てりゃいいかな。」

 と、言いまた自分のファイルに目を向けた。

 綾は小森が教えたファイルのうち、ランダムに3冊棚からぬいた。 明香が苦笑いしながら

「ごめんね。今日は1年で一番忙しい日なんだ。こっちおいで。私の仕事を一緒にやろう。」

 と言った。

「あっ。はい。」

「えーっと。私たちはだいたい町ごとに担当を決められるの。で、私で80ケース持ってるの。綾は60くらいかな。」

「60。ケースですか。」

「で、小森さん。私たちはしゅうさんって呼んでる。小森 周。」

「小森トレーナーはしゅうさんですね。週みっかみたいですね。」

「週3じゃねえし。」

 明香のうしろから周がつぶやいた。

「週3、週4って。バイト?それじゃ生保課のエースも「とほほ」ね。」

「しゅうさんはエースなんですか。すごいですね。じゃあ嶋本さんは何ですか?」

「明香はメーカーだな。」

 ファイルを見ながらつぶやく小森に明香がふりむきざまに

「何メーカーよ。もう。」

「そりゃトラブルメーカーだろ。」

「とほほエースの周さん。メーカーは、妙でしょ。余分な仕事メーカー。」

 ここにはいない「たえ」という人が「余分な仕事メーカー」らしい。

 いずれにしても、仲のいい感じの二人の会話だった。

「嶋本さんは何年目なんですか?」

「わたしは2年目よ。周さんは20年目。」

「えっ?」

綾は小森は30くらいかなって思っていたので、ケースワーカー20年というキャリアに驚くとともに、それじゃ40過ぎなんだってさらに驚いた。

「エースだけどオヤジ。見えないけどね。」

「オヤジはやめろ。せめてオッサンにしろ。」

 意味が見いだせない違いだが、小森には大きいこだわりだった。

「わりい。明香。こいつとぼけてて大丈夫そうだから、一緒にシメの決裁をやって、

教えてやってもらおう。」

「えっ」

 こいつって呼ばわり方と、とぼけてるって見られている事と、大丈夫そうっていう評価とシメをやらされるっていうことに、綾は驚き、ちょっと恥ずかしく思い、そして嬉しく思った。

「えっ」は明香も同じだったが、小森の事をよく知り、彼を慕う彼女は、今日初め会うのに何年も一緒にいるような綾の表情を見て

「いきなり。。。絶句。。。だけど綾はお客さんっぽくなさそうだね。やろっ。」

「はい。」

 そのやりとりの最中も、小森はファイルを見ていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ