表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バスケやろうよ  作者: みなもと とおる
13/39

周が来た

若葉区対中央図書館戦は18対10で若葉区が勝ち、京浜区の対戦相手は若葉区に決まった。

「周さん、まだかな?」

 田中が言うと

「そろそろじゃない。」

 と妙が言った。

 福祉局対富士見区戦が始まった。 

福祉局はエースの増山にセンターが宮本。フォワードの栗山。女子の小澤。それに噂の新人ガード大迫。山下は控えだった。


 ゲームが始まった。ジャンプは宮本が永井を制した。そのボールを増山がキャッし、ゴールに走る大迫にパス。あっと言う間に2点を先取した。

 次は富士見区のオフェンス。当然上川に増山がついた。上川のカットインや絶妙のボディバランスから撃たれるシュートを止めないと、福祉局でも勝てないかもしれないからだ。富士見区の上川は前回の谷戸区戦ではドリブルをキープして隙を見てカットインるか、シュートをしていた。しかし、この試合では富士見区はパスを回し始めた。

 上川のワンマンチームの富士見区。しかし、結構練習しているようなパス回しだった。


 上川にパスが来た。そのとき、上川のスリーポイントシュートが瞬く間に放たれた。

「あっ。」

 増山がシュートブロックに行ったが、ボールがきれいな弧を描いてリングを抜た。

「やばっ」

 綾が思わずつぶやいた。

 上川のスリーで勝つ。オフェンスの時間24秒をいっぱいに使って変幻自在の上のシュートのチャンスを作る。福祉局は増山・宮本そして大迫と得点しても2点。山もリスクを侵して確度の低いスリーには行けない。

 やはり上川を止めるのみ。永井が決めても2点。増山は大迫に指示を出し、ダブルチームで上川を止めに来た。ここまで上川のスリーが3本。福祉局は増山が4点。大迫が2点。第1ピリオド終了時には9対6で富士見区がリードしていた。

「おそるべし。カーミィ。あんなにスリーが入るかよ。」

 田中が言った。

「でも、ここまでかな。福祉はカーミィにダブルチーム組んだし。」

 試合はこの後、田中の予想どおりの展開になった。 

 福祉局のタイトなディフェンスに上川が封じられ、次第に福祉局ペースになった。

しかし、上川も一瞬の隙をついてスリーを決めた。

 しかし、福祉局のリードは10点差がついていた。


「おお。かみ頑張ってるじゃん。」

 聞き覚えのある声。

振り返るとそこには周が立っていた。

「周さん。遅い。」

 妙が周に近寄った。

「かみも頑張ってるけど、福祉、どうなのよ。」

 そんなやりとりをしていると、福祉局の大迫がシュートを決めた。

「おっ、うまいじゃん。」

「あの子が福祉の大型新人。」

 普段はチノパン(ノータック)や細身のカーゴパンツに無地のボタンタウンシャツ(だいたい白)姿の小森 周。だか、今日の周は「派手?」としか言いようのない赤い花柄のウエスタンシャツ(切り替えに黒いスエードを使っている)にブーツカットのジーンズ(ディーゼル?)。だが、めちゃくちゃ似合っていた。


「今日は周さんの私服、萩原 流行?風? 」

妙が聞くと、

「知らないだろう。ブラピだ。」

 と、周が答えた。

「ぶらぶらっぴー?それはなんかのゆるキャラ?」

「いや、ブラッド・ピット。アメリカの俳優だ。」

「はやく着替えてくだいさいね。ていうか、私たちも着替えなきゃ。綾、ユニフォーム。」

 妙から綾にバスケウエアが渡された。それはグリーンと白のリバシブルのウエアだった。」

「ユニフォームがあるんですか?」

「そう。うちにはユニフォームがあるの。ユニフォームがあるのはうちと大学病院と

レスキュー隊の3チームだけ。」

 

そこに、すでにユニフォームに着替えていた田中と三宅、石垣がやって来た。

 セルテックスのチームカラーのグリーン。白のラインに「BuzzerBeater」とチーム名が白の筆記体で表記されたユニフォーム。

「なんて、かっこいいユニフォーム。」

 もう、綾の笑顔ははちきれていた。

「バザーベーターってどいういう意味ですか?」

「ブザービーター。試合終了のブザーとともにゴールするってこと。最後まで諦めないで勝つっていう意味。」

 妙が綾に怒気を軽く含みながら言った。

「色がグリーン。ボストンセルティクスですよね?」

 綾が無邪気にそう聞くと

「違うの。何か周さんの大学のチームカラーなんだって。」

「周トレーナーの。だいがく?」

「でも、かっこいいでしょ?」

 コートに戻るとひときわ目立つ緑の軍団。そこには小森の姿もあった。

 前の試合のハーフタイムになり、京浜区チームと若葉区チームがともに軽いアップを始めた。

 いつものメンバーに小森。綾は当然、小森のプレイに期待したが、基本に忠実なき

れいなフォームのシュート。軽く流している感じに見えた。

 職場でのクールなケースワーカーでの小森。周囲を大きな心で包み、自分もそうだが、他の同僚や後輩を文字通り体をはって守り、上司も守る小森 周トレーナー。

 その人が同じコートで大好きなバスケを自分と一緒にしている。

 その光景が綾には嬉しくてしかたがなかった。

 小森が加わり、強い京浜区チームが無敵になったように感じた。これで戦力が落ちたとは。じゃあ昨年はどれだけ強かったの?

 そんな事を考えたら妙に聞かずにいられなかった。

「かっこいいですね。周トレーナー。」

「そうね。」

 ウオーミングアップの時間は終わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ